まるで宙に浮いた:シトロエンDS 存在感半端ない5.5m:ビュイック・エレクトラ お国柄丸出しワゴン(3) 

公開 : 2025.06.01 17:49

ミニバンやSUVが人気を得る前から作られてきた、6名以上で移動できるクルマ 実用性と上質さを両立した車内 型破りなほど個性的なボディ 熱烈なファンを生んだ特徴 UK編集部が5台を振り返る

まるで乗り心地は宙に浮いた乗り物のよう

シトロエンDS 20 ブレークを所有するジェイミー・ピゴット氏は、3列目のシートほど、2列目は快適ではないと感じているらしい。「シート表面の張り具合は、2列目の方が良いんですけれどね」

「内装は、そこまで豪華ではありません。でも、沢山の洋服を運ぶのに困らない広さはあります。DSは、フランスのパリから南岸のニースまで、1日で移動することを前提に作られています」。と続ける。

シトロエンDS 20 ブレーク(1958~1973年/英国仕様)
シトロエンDS 20 ブレーク(1958~1973年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

このDS 20 ブレークの定員は7名。多少乗り心地が悪いという2列目でも、シトロエン名物のハイドロニューマチック・サスペンションの恩恵は受けられる。まるで宙に浮いた乗り物のように。とあるエッセイストは、「空から落ちてきた乗り物」だと表現した。

ハイウェイを流し家族で自然を目指すクルマ

そして今回の5台目は、6.6L V型8気筒エンジンを搭載した巨大なアメリカン・フルサイズワゴン。フィアット600 ムルティプラや、モーリス・アイシス・トラベラーの対局にあるモデルだろう。

1978年式のビュイック・エレクトラ・エステートワゴンは、広大なハイウェイを流し、家族で郊外を目指すのに丁度いい。TVドラマの刑事コロンボに登場しそうな風貌ともいえる。何かを握っている悪徳弁護士が、降りてきそうだ。

ビュイック・エレクトラ・エステートワゴン(1977~1979年/英国仕様)
ビュイック・エレクトラ・エステートワゴン(1977~1979年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ボディ後方が木製のウッディワゴンは、西部開拓時代からの伝統スタイルだが、1953年以降のビュイックのステーションワゴンは、すべてスチール製になっていた。それでも、大自然とネルシャツが似合う、フェイクウッド風サイドトリムがうれしい。

1959年に、ビュイックは初代エレクトラを発表。1977年には5代目へ進化した。環境規制へ対応するため、先代より車重は450kg以上軽量化。3列目のシートは、ひと回り小さいビュイック・ル・セイバーと共有する。

存在感が半端ない全長5.5mのボディ

今回のエレクトラ・エステートワゴンは、ロス・マッケンジー氏がオーナー。全長5504mm、全幅2030mmという巨体で、存在感が半端ない。彼は、2024年1月に購入したばかりだという。

「ビュイックの1985年式サルーンを所有していたんですが、ステーションワゴンが前から欲しかったんです。ネットでこのクルマを見つけて、どうしても気持ちを抑えきれませんでした」。マッケンジーが笑う。

ビュイック・エレクトラ・エステートワゴン(1977~1979年/英国仕様)
ビュイック・エレクトラ・エステートワゴン(1977~1979年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

アメ車のデザインは大らかだと思いがちだが、作り込みは意外に精巧。テールゲートの開き方には、多段調整機能が付いている。新車時の英国価格は、オプションレスで5000ポンドだった。

とはいえ、クルーズコントロールにパワーウィンドウ、リモコン式テールゲート・ロックなど装備を充実させると、9000ポンドに迫った。英国でのターゲットは、好印象をご近所に与えたい、企業の幹部に設定された。

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Roberts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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