【渡辺敏史が試乗】仕立てのいいスーツの下は筋骨隆々!007の世界観を地で行くアストン マーティン・ヴァンキッシュ

公開 : 2025.05.04 11:45

3代目として登場したアストン マーティン・ヴァンキッシュに渡辺敏史が試乗します。過去の2台とも、フラッグシップとして全てを詰め込んできた印象です。果たして1000NmものトルクをFRで、どのように表現してきたのでしょうか。

初代はアストン マーティン復活の狼煙

21世紀の幕が開けるや、アストン マーティン復活の狼煙となったモデルは、その名にしっかりと想いが託されていた。

『Vanquish(ヴァンキッシュ)』

3代目として登場したアストン マーティン・ヴァンキッシュ。
3代目として登場したアストン マーティン・ヴァンキッシュ。    内藤敬仁

順風満帆とはいかなかった過去を克服する。現在のライバルたちに対して優位に立つ。そして未来のスポーツカー市場を征服する。察するにそんな意を示したものだろう。

そのクルマ、初代ヴァンキッシュのボンネットに納まったのは自然吸気の6L V12だ。当時PAGの一員としてフォードの指揮のもと、再建中だったアストンが付加価値のためにデュラテック3L V6を連結するかたちで独自開発したAM29型で、ヴァンキッシュへの搭載はDB7ヴァンテージに次ぐ二例目だった。

以降、DB9やV12ヴァンテージなどにも搭載され、以降のアストンの成長の、文字通り原動力となったのを承知されている方もいらっしゃるだろう。

6L V12から5.2L V12ツインターボへ

3代目となる新型ヴァンキッシュが搭載するエンジンは、初代〜2代目と続いた6L V12から5.2L V12ツインターボへと改められている。DB11から搭載されるAE31型は、骨格設計を継承しながら10mm近くストロークを詰めて排気量を抑えつつ、ポート噴射のまま過給でトルクとパワーを上乗せする、クラシックなスポーツユニットの手法を採った。

このエンジンの発展版となるAE34型を搭載したヴァンキッシュのアウトプットは835ps/1000Nm。初出しのDB11に対しては227ps/300Nmの向上を果たしている。ターボマジックとはいえ数値的にはまったくの別物、実に3L級のクルマ1台分のパワーが上乗せされた計算だ。

このスペックは12気筒スーパースポーツの実情や、xHEV化によるトルクリッチ化など、スーパースポーツカテゴリーのライバルたちの動向を意識しながら設定されたものであることが伝わってくる。

それほどのエンジンを搭載する車台は、あくまで伝統に忠実だ。ZFの8HPを後軸側にマウントするトランスアクスルレイアウトではあるものの、駆動方式はFRを貫いている。これはもう代々の歴史やスタイリングにも関連する彼らの定理だが、1000Nm級のトルクを御するなら四駆やMRの方が有利なことは間違いない。果たしてどのようなチューニングを施されているのかが興味深いところだ。

ちなみに前後重量配分はリア寄せではなく、車検証記載値を四捨五入すれば51:49と、ほぼイーブンとみていいだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渡辺敏史

    Toshifumi Watanabe

    1967年生まれ。企画室ネコにて二輪・四輪誌の編集に携わった後、自動車ライターとしてフリーに。車歴の90%以上は中古車で、今までに購入した新車はJA11型スズキ・ジムニー(フルメタルドア)、NHW10型トヨタ・プリウス(人生唯一のミズテン買い)、FD3S型マツダRX-7の3台。現在はそのRX−7と中古の996型ポルシェ911を愛用中。
  • 撮影

    内藤敬仁

    Takahito Naito

    1986年よりフリーランスカメラマンとして主に車関係の雑誌、広告の撮影に携わる。趣味は洗車。好きな音楽は1970年代のブリティッシュロック。たまにロードバイクでサイクリンロードを走って風圧と老化に抵抗したりする。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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