【ワンオフも制作可能】アストン マーティンの「Q」 V600 007エディション V12 スピードスター 前編

公開 : 2021.10.02 11:05  更新 : 2021.10.12 16:23

ドアとルーフ以外のボディは特注

サイモン氏が続ける。「お客様は、カーボンファイバーを用いた特注ボディを望んでいました。通常のヴァンテージと同じボディパネルは、ドアとルーフのみ。オリジナルのV600へリンクするデザインが施されています」

「サイドシルの形状はもとのままで、本物のコークボトル・ラインが生まれました。ボンネットの膨らみは、オリジナルを彷彿とさせますね」

アストン マーティン・ヴァンテージ V600
アストン マーティン・ヴァンテージ V600

ブラックアウトされたフロントグリルも特徴だろう。もちろんインテリアも大幅に作り直され、カーボンのセンターコンソールと、軽量なシートが組まれている。

「最初に製作したクルマで多くのテストを実施する必要があり、非常に高コストの仕事になりました。1台のビスポーク・モデルでの実現は難しかったでしょう」

「しかし、少量生産での限定モデルなら、賢明な価格でお客様に提供できます。ほかのお客様の獲得も可能だと、示した例ともいえます」

ヴァンテージ 007エディション

アストン マーティン・ヴァンテージ 007エディションは、映画007、ノータイム・トゥ・ダイのタイアップで制作された限定モデル。1987年の007リビング・デイライツへ登場する、ヴァンテージV8へのオマージュとなる。

007エディションのベースは、もちろんヴァンテージ。カンバーランド・グレーと呼ばれるボディ色のほか、多くのディテールが盛り込まれている。その中でも、メッシュグリルは特別な技術が必要な部分だったという。

アストン マーティン・ヴァンテージ 007エディション
アストン マーティン・ヴァンテージ 007エディション

「レーザーカットを用いて切り抜いたグリルで、オリジナルと共通するディテールです。ヴァンテージのグリルは小さく、取り込むべき空気の量はもともと限界の手前。かなりの技術開発が必要でした」

「エンジンへ充分な空気が送られるように、毎秒何リットルの空気が流れるのか計算してあります」。とサイモン氏が説明する。

専用オプションのスキーラック

ディフューザーのオレンジのストライプも、リビング・デイライツでの特殊装備をイメージさせる。車内を覗くと、センターコンソールに007のロゴがあしらわれている。

映画の登場マシンと同様には機能しないが、特殊装備のスイッチパネルも付いている。シートは、1987年のヴァンテージV8に似せた仕立てを採用。カーボンファイバーで作られたリアシートもある。

アストン マーティン・ヴァンテージ 007エディション
アストン マーティン・ヴァンテージ 007エディション

リビング・デイライツでは雪山のシーンで格納式スキーが活躍するが、専用オプションを設定することで、ファンの心をくすぐった。「開発予算内では、クルマから展開可能なスキーまでは難しいものでした」

「そこで、同配色のカスタム・スキーを設定。クルマの後部へ吸盤で取り付けられるスキーラックを用意したんです」。このアイテムは支持を集めた。007エディションを注文した人の60%ほどが、スキーラックのオプションも選んでいるそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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