ホームビルド・スポーツカー 前編 ロータスにターナー、ロッチデール ほか

公開 : 2021.11.20 07:05

1950年代の英国では、手頃なスポーツカーが不足していました。そこで選ばれた手段が、スペシャルと呼ばれた自作モデル。現存するその一部を、英国編集部がご紹介します。

オーナーが作るスペシャル・モデル

執筆:Simon Taylor(サイモン・テイラー)
撮影:James Mann(ジェームズ・マン)
翻訳:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
スペシャル・モデルと聞いて、どんなクルマを想像するだろう。1950年代の英国では、アマチュアが中古部品を買い集めて作ったようなクルマを指していた。

その昔、手頃な量産スポーツカーが存在しなかった英国。古いオースチンフォードを安く手に入れ、エンジンとシャシーを利用し、軽く独創的なボディに置き換えるという手法が一般化していた。

英国コッツウォルドで開かれたヒストリック・スペシャルデーの様子
英国コッツウォルドで開かれたヒストリック・スペシャルデーの様子

エンジンをチューニングし、アスクルレシオを変え、独立懸架式のサスペンションを与えるオーナーもいた。また、当時は先進的といえたガラス繊維強化プラスチック、FRP製のボディを提供するメーカーも複数存在していた。

だが、広告写真はスタイリッシュでも、基本的にはボディの表皮のみ。滑らかなサイドラインにカバーの付いたヘッドライト、ガルウイング・ドアに惹かれて購入しても、届いてから大幅な加工を必要とした場合が殆どだった。

そのため、実際に理想が現実となったスペシャル・モデルは少ない。水準の高い例もあったものの、車検が一般化する以前だったとはいえ、信頼性が低く粗悪な作りなことの方が多かった。

1950年代後半に入ると、オースチン・ヒーレー・スプライトやBMCミニの登場が、ドライバーを誘惑する。それでも新車に掛けられる高い税金のおかげで、キットカーとして需要は残った。

複数メーカーからエンジンやシャシーなどを購入したことを証明でき、自ら組み立てることが可能なら、免税扱いとなったのだ。ロータス・エリートですら、英国ではキットカーとしても購入可能だった。

それから半世紀以上が過ぎ多くが消滅していったが、一部は大切に残されている。毎年8月になると、英国コッツウォルドでヒストリック・スペシャルデーが開かれている。

英国編集部では、そのスペシャル・モデルのスペシャル・デーにお邪魔させていただいた。風変わりなクルマを何台かご紹介させていただこう。

ロータス・シックス(オーナー:ナイジェル・スペンサー)

ロータスの創業者、コーリン・チャップマン氏の事業は、スペシャル・モデルの販売から始まっている。最初のロータスは、1930年代のオースチンがベース。オースチン・セブンのシャシーに、合板で作られたボディが載せられていた。

1952年、彼は1172ccのフォード10用ドライブトレインを搭載でき、シンプルなアルミ製ボディを被せられるスペースフレームを開発。そのクルマはレースで勝利を収め、キットカーへの注文が寄せられるようになった。

ロータス・シックス(オーナー:ナイジェル・スペンサー)
ロータス・シックス(オーナー:ナイジェル・スペンサー)

軽量で操縦性に優れるだけでなく、複数メーカーのエンジンに対応できた点も強み。フォードのほかMGやBMWといった銘柄のユニットが、オーナーの手で積まれたという。合計100台以上が売れ、今へと続くスポーツカー・ブランドの礎を築いた。

ナイジェル・スペンサー氏が所有する1台も、そのロータス・シックス。ポリッシュ仕上げのアルミ・ボディが眩しい。サスペンションはフロントがコイルスプリングとダンパーによる独立懸架式、リアはソリッドアスクルだ。

フォード車用のホイールが、いかにもキットカーらしい。エンジンはフォード100E用のサイドバルブで、アルミ製ヘッドを搭載。3速MTにはクロスレシオが組んであるという。

スペンサー家にやって来てから50年。モスキート戦闘機のパイロットもしていたという父が1970年に購入したものの、完成させることはなかったそうだ。

しかしナイジェルが8年前に一念発起し、シックスを完成させた。今では、サイドバルブを特徴とするロータス初期の量産モデルとして、完璧な姿を湛えている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・テイラー

    Simon Taylor

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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