フォルクスワーゲンID.4 詳細データテスト 穏やかな出力特性と操縦性 遅くないが刺激は足りない

公開 : 2021.11.06 20:25  更新 : 2021.11.08 06:37

フォルクスワーゲンのスポーティなEV、GTXシリーズの処女作は、電動化時代のGTIになることを期待されましたが、拍子抜けするほど普通のクルマでした。今後のGTXはこの方向性で進むのか、それとも…。気になります。

はじめに

1976年6月に発売されたフォルグスワーゲン・ゴルフGTIがホットハッチの元祖だという説には議論の余地があるものの、世界的に名の知れたハイパフォーマンス系サブブランドのひとつがここからはじまったことは、誰もが納得するところだ。

高性能モデルの名門ともいえるフォルクスワーゲンのGTIは、BMW Mを上回る45年以上の歴史を持つが、生み出してきたモデルの数はわずかだ。

テスト車:フォルクスワーゲンID.4 GTXマックス
テスト車:フォルクスワーゲンID.4 GTXマックス    LUC LACEY

対して、今回取り上げるクルマは、今後長く続き、ウォルフスブルクにおいてGTIより大きな意味を持つことになるだろうサブブランドの幕開けを飾ることになるだろう。フォルクスワーゲン初の、完全電動パフォーマンスモデルには、GTXの名が与えられた。

これは、拡大解釈すればGTIブランドからの派生だ。2014年に登場したゴルフVIIのGTEや、2012年の5代目ポロに用意されたブルーGT、はたまた1982年に遡るゴルフGTDといったモデルたちと同じ手法だといえる。

フォルクスワーゲンは、ゼロエミッションなファミリーカーの最新モデルを発表するにあたり、こんなことを言っている。「サステナビリティとスポーティさが、別々のものである必要はない」と。

その訴えはもちろん、テスラポールスター、はたまたBMWなどがここ最近で市場に投入したスポーティなEVに興味を持つ顧客層へ向けたものだろう。それでもそうしたユーザーは、フォルクスワーゲンは電動パフォーマンスカーを単発的に用意しただけで、ここからシリーズ化されていくとは考えないかもしれない。

そうであっても、ウォルフスブルクがそうしたコンセプトを打ち出す場合、それが衝動的なもので終わることは多くない。今回もそうなるに違いない。GTX仕様はクロスオーバークーペのID.5から、コンパクトカーのID.ライフまで、IDシリーズに広く用意されるというのがもっぱらの噂だ。

そんなGTXのバッジをリアエンドやシート、さらにはステアリングホイールにまで掲げるモデルは、どういった種類のエキサイティングな走りを味わせてくれるのか、それを今回のID.4では探ってみたい。

GTXの名は、単にフォルクスワーゲンの最新グレードのひとつに過ぎない程度のものなのか。それとも、正真正銘のスペシャルさを感じさせる、際立ったクルマだと思わせるものに仕上がっているのだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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