見た目に騙されてはいけないクルマ 35選 前編 羊の皮を被った狼たち

公開 : 2021.12.31 18:05

見た目で判断できないのは、人もクルマも同じ。おとなしそうに見えても、怒らせると怖いクルマを紹介します。

目立たないけど本気を出すと強いヤツ

アウディR8が速いことは、いまさら言うまでもない。たとえ芝刈り機のエンジンを積んでいたとしても、速いクルマに見えるはずだ。

一方、写真のフォードマスタングのV8エンジンを搭載したローバー75のように、強力なドライブトレインをおとなしいボディの下に隠しているクルマもある。そうしたクルマは、ファンの間では「羊の皮をかぶった狼」という意味で「スリーパー(あるいはQカー)」などと言われている。

ローバー75 V8
ローバー75 V8

今回は、高出力のミニバンからサーキット走行可能なSUVまで、これまでに販売された究極のスリーパーを紹介する。クルマを見た目だけで判断してはいけない。

サンビーム・タイガー(1964年)

MGBに真っ向から対抗したサンビーム・アルパインのエンジンは、1.7L 4気筒の100psユニットが最もポピュラーだった。米国の消費者にアルパインをアピールするため、キャロル・シェルビーは、この4気筒を4.2Lのフォード製V8エンジンに換装するよう求められた。

その結果、1964年から1967年にかけて7000台以上が製造されたのが、サンビーム・タイガーである。

サンビーム・タイガー
サンビーム・タイガー

メルセデス・ベンツ300 SEL 6.3(1968年)

メルセデスの奇才、エーリッヒ・ワクセンベルガーは600セダンの6.3L V8を300 SELに搭載して誕生させたモデル。最高速度225km/h、0-97km/h加速7.3秒という、比較的コンパクトなクルマとしては非常に印象的な数字を叩き出したラグジュアリー・リムジンである。

1968年から1972年にかけて、6525台が製造された。

メルセデス・ベンツ300 SEL 6.3
メルセデス・ベンツ300 SEL 6.3

トライアンフ・ドロマイト・スプリント(1973年)

モーリス・マリーナの直後に発売されたドロマイト・スプリントは、BMWと互角に渡り合うために設計されたコンパクトな上級車である。気筒あたり4つのバルブを持つ最初の生産車であるスプリントは、2.0Lで128psを発揮する。

しかし、見た目はその半分以下のパワーしか持たないドロマイト1300とほとんど変わらなかった。現存するのは380台程度だという。

トライアンフ・ドロマイト・スプリント
トライアンフ・ドロマイト・スプリント

メルセデス・ベンツ450 SEL 6.9(1975年)

メルセデス・ベンツは1973年のジュネーブ・モーターショーで6.3の後継モデルを発表する予定だったが、オイルショックの影響で発売を1975年に延期した。購入者の多くは、待った甲斐があったと語っている。

450 SEL 6.9は、ロングホイールベースのW116のシャシーをベースに、先代のV8エンジンを6.8Lに拡大し、ドライバーの右足に290psを与えるようにチューニングされたモデルである。当時のパンフレットには、0-100km/h加速7.4秒、最高速度225km/hと記されていた。車重が1985kgあることを考えると、当時としては驚くべき性能であろう。

メルセデス・ベンツ450 SEL 6.9
メルセデス・ベンツ450 SEL 6.9

シトロエンと同様のハイドロニューマチック・サスペンションシステムを搭載し、大きなボディで乗員を包み込む。その性能に反し見た目はかなり控えめで、リアに「6.9」のエンブレムが付くだけで、450 SELとほとんど変わらなかった。1975年から1980年にかけて約7380台が生産され、非常に高価なモデルであった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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