アルピーヌA390 GT(2) 一石を投じる手頃サイズの電動クロスオーバー 「らしさ」は充分といえるか?

公開 : 2026.05.20 18:10

アルピーヌ初の四輪駆動となる、クロスオーバーのA390。GTでは3モーターで401psを発揮し、充分なエネルギッシュさを秘めます。他方、操縦性は期待に届かない様子。UK編集部の評価です。

ゼロヨン13.2秒のエネルギッシュなクロスオーバー

同クラスで唯一といえる、トリプルモーターを得たアルピーヌA390。試乗したGTグレードは総合401psあり、0-100km/h加速4.8秒が主張される。ライバルを凌駕する速さではないが、仮にハイパワー競争へ加わっても、ただ翻弄されるだけかもしれない。

今回のテストでは実際に4.9秒で処理し、レスポンスはキビキビ。0-400mダッシュも13.2秒と、エネルギッシュなクロスオーバーだといっていい。ローンチコントロールを実装するが、トラクションに優れ、普通にアクセルペダルを蹴飛ばせば鋭く加速できる。

アルピーヌA390 GT(英国仕様)
アルピーヌA390 GT(英国仕様)

モーター3基のトルク分配を任意に設定できたり、電子制御システムに驚きがあるわけではない。だが、普段使いでのパワーデリバリーは滑らかで、運転しやすく感じるはず。

回生ブレーキはステアリングホイール下部にあるスイッチで調整可能。減速感は直感的で、ワンペダルドライブにも対応する。その反対側のOVボタンは、オーバーテイク用。押すとアクセルペダルの反応がシャープになるが、パワーアップはしない。

アルピーヌへ期待する流暢さへあと一歩

操縦性は、クロスオーバーとしては軽快。アルピーヌというブランドだけに、しなやかで流暢な、一体感のある運転体験を期待する人は少なくないはず。ミドシップスポーツのA110のような走りを、求める人はいないとしても。

ところが郊外の一般道を飛ばすと、そんな印象を受けにくいのが惜しい。ステアリングは適度にクイックで、ホイールベースは短い側にあり、コーナリングは確かに速い。手のひらへ伝わるフィーリングも豊かといえ、ワインディングが苦手なわけではない。

アルピーヌA390 GT(英国仕様)
アルピーヌA390 GT(英国仕様)

しかしダイレクト感は高くなく、ルノーのフィーリングがほのかに香る。トルクベクタリングも、敏捷性へ効果的には貢献していない様子。カーブの頂点を過ぎ、アクセルペダルの角度を変化させても、明確にラインを絞れるわけではない。

シャシーの限界は高いが、それが迫ると不自然にステアリングの感触は薄くなり、神経質さが顕になる印象。A290のそれは、高負荷時ほど活気が増すのだが。

航続距離は普段使いで450km

油圧バンプストッパーの効果で、乗り心地は良好。強い入力を受けても、巧みに衝撃は吸収される。アルミホイールは20インチと大径だが、細かな揺れも抑えられている。

反面、2156kgの車重が影響し、大きなうねりでは上下動が目立ち気味。姿勢制御へ苦労している印象は伴う。

アルピーヌA390 GT(英国仕様)
アルピーヌA390 GT(英国仕様)

トリプルモーターやシャシーを強みにしたいはずのアルピーヌだが、動的能力には一層の訴求力が欲しいところ。競合モデルは2基のモーターや電子制御デフなどで、スポーティさを叶えているのだから。

今回の試乗で得た航続距離は、市街地中心の普段使いを想定した条件で約450km。高速道路の巡航では、350km程となる。電圧400Vの電動アーキテクチャを採用するが、急速充電も150kWと、際立つ数字ではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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