ベントレー・コンティネンタルGTスピード・コンバーチブル

公開 : 2014.07.19 22:30　　更新 : 2017.05.29 19:03

■どんなクルマ?

コンチネンタルGTスピードのコンバーチブル版は、W12エンジンのわずかな出力変更とスタイリングの見直し以外の大部分がクーペのコンチネンタルGTと等しい。

先代のGTスピード・コンバーチブルが出た時と同じように、今回のモデルも数値データの更新が図られた。

6.0ℓのW型12気筒エンジンは、電気系統とタービンに手が入れられ最高出力は635ps、最大トルクは83.9kg-mに達する。先代からは10psと2.4kg-m向上したことになる。

こちらが怖気づくほどのパワーと、オープンカー特有の豪奢な雰囲気を持つことは間違いない。ただし、厳密に言うとクーペよりもあらゆる面で身体能力が抑えられている。どれもがほんのわずかなのだけれど。

クーペにあったスチール製の小屋根は、3つのレイヤーが7段階の動作を行うファブリック・フードに置き換えられ、動作を司る装置と追加の補強材を携える事が災いして乾燥重量はクーペ比+175kgとなった。したがって、総重量は2495kgにのぼるのだ。

0−100km/h加速のタイムはクーペより0.1秒遅い4.1秒、最高速度は5km/h控えめな327km/hというのがベントレーの公式なアナウンスメントだ。

2トンを超える車重に対して目くじらを立てるオーナーがどれほどいるのかわからないけれど、少なくとも327km/hという最高速度は会員制のバーやゴルフ場で大いに自慢できるレベルだというのは間違いない。

■どんな感じ?

2.5トンに達する勢いの、しかも厳然たる剛性を持たない幌型のクルマがどれほどのコントロール性を発揮するのか、はっきり言ってこれほど想像に易いことは無いのではないだろうか。

しかしながらコンチネンタルGTスピード・コンバーチブルの場合は、例外の方に属する。事実、多くの路面状況で見事に落ち着き払っているのだ。たまにクーペには見られない欠点に直面するにしても、大部分において、一貫してマナーよく走るのだ。

特に高速コーナーでのボディ・コントロールは軍を抜いているだけに、タイトなコーナーを意図的に緩やかな速度で曲がるときのみ、このクルマの重さとサイズを感じる結果となった事は惜しい。

落胆せざるを得ないのは、幌の開閉速度である。開閉にはそれぞれ25秒がかかり、しかも車速が32km/h以下でないと動作できない。降り続く雨が勢いを弱め、ようやく太陽が雲間から顔を出したとしても、頭上空間を解放するにはかなり遅い速度で進む道路状況にいない限り不可能なのだ。

幌を開け放てば、クーペよりも盛大にW12エンジンの雄叫びを耳にすることが出来る。スポーツ・モードにすれば更に粗暴なサウンドを聞くことになる。あるいはしばらくすると、耳が疲れることになるかもしれないが。

標準のドライブ・モードに入れたままの方が賢明かもしれない。風切り音の処理は巧みで、同乗者とも常に静かに会話をすることができるからだ。このクルマの与えてくれる、落ち着き払った優雅な時間こそがコンバーチブルの特権だと言えよう。

■「買い」か?

オプションを選ばない状態ではクーペ・モデルよりも£15,700(233万円)高い。またテスト車両には£30,380(450万円)分のオプションが追加されているため、総額は£202,780(3,003万円)にまで膨れ上がった。

しかしベントレーの場合、プライス・タグがどれほどの意味合いを持つのかと考えてみるといいかもしれない。ベントレーのオーナーならば、価格を通り越した、コンバーチブルそのものの価値を見出だせると言うわけだ。実際の所、クーペとコンバーチブルの売上はざっくりと50:50に分かれると言うのがベントレーの見通しだ。

よく切れる包丁のような鋭さを求めるのならば、選択肢は多分にある。ただし、これほど’ムード’を持ち合わせたクルマが他にあるだろうか。コンチネンタルGTスピード・コンバーチブルはオープン・トップ界における唯一無地のラグジュアリー・クルーザーなのだ。

(マット・バート)