EV全盛期のデザイン、どう変わる? 抜本的に刷新されるポルシェの外観とは デザイナーインタビュー

公開 : 2023.08.29 18:25  更新 : 2023.08.29 19:40

電動化が進む中、クルマのデザインはどう変わっていくのか。ポルシェは「伝統を尊重」しながらも外観を抜本的に作り変え、次の時代へ進もうとしています。デザイナーのシャインヒュッテ氏に話を聞きました。

EV時代のポルシェ、どう進化する?

ポルシェは、「EV時代」におけるスポーツカーのデザインの方向性を根本的に変える。最近公開された2台のコンセプトカー、ミッションXとビジョン357から、今後の見通しについてのヒントが得られる。

先進的なエクステリアデザインを統括するインゴ・シャインヒュッテ氏はインタビューに応じ、今後のポルシェのスポーツカーのスタイリングについて、伝統を尊重した「進化でなければならない」と語った。セダンやSUVにも影響を与えることは間違いないだろう。

ポルシェのスポーツカーデザインは今後どのように進化していくのだろうか。
ポルシェのスポーツカーデザインは今後どのように進化していくのだろうか。

AUTOCARはシャインヒュッテ氏に話を聞き、ポルシェの最新コンセプトカーから将来のEVがどのように形作られるかを探った。

2台のコンセプトに見る未来のデザイン

――EVハイパーカー「ミッションX」と356にインスパイアされた「ビジョン357」のどの要素が市販車に採用されるのでしょうか?

「コンセプトにはすべてのアイデアを採り入れますが、それがどのように発展していくかを見なければなりません。連続する光のアーチのように、ブランドIDに不可欠な要素もあり、ミッションXではその発展形が見られます。単なるライトバーではなく、ポルシェのロゴが組み込まれているのです。わたしは、これが市販されることを確信しています」

ポルシェ・ミッションXコンセプト
ポルシェ・ミッションXコンセプト

「2台のコンセプトカーは、デザインのアプローチが大きく異なります。357はポルシェのオリジナルシェイプへのラブレターであり、ミッションXはポルシェのデザイン言語を発展させたものです」

――このデザインアプローチは他のセグメントでも応用できますか?

「リムジンやSUVのセグメントに行けば行くほど、3D形状で遊べることは少なくなります。スポーツカーは青写真のようなもので、わたし達はそれをSUVに適応させようとしています」

「うまくいくものもあれば、そうでないものもあります。357にはサイドに折り目がありますが、通常ポルシェはとても丸みを帯びています。今回(357)は、少しエッジを効かせて角を出し、全体に角を持ってくるようにしました。これはSUVにも応用できると思います」

「伝統」という重み

――ブランドの伝統を尊重しながら、どのように新しいアイデアを導入するのですか?

「伝統と革新の両方を同時に押し進めなければなりません。わたし達は75年間クルマを作り続けてきましたが、自動車業界で最も怠惰なデザイナーと呼ばれてきました。常に可能な限り革新的であろうと努めていますが、デザインに革命を起こしたいわけではありません。必要なのは進化であり、わたし達は75年間、このレシピを使い続けてきたのです」

911はポルシェが最も慎重を期しているモデルだという。
911はポルシェが最も慎重を期しているモデルだという。

――911のような現行モデルの電動バージョンを生産する上での課題は何ですか?

「911の最大の課題はパッケージングではなく、その非常に強い伝統です。911はわたし達が最も気を配っているクルマであり、次世代に移行する際にも慎重を期する必要があります」

「(現行の)911をデザインしたとき、方向性が大きく異なる示すスケートボードを半ダースは作りました。911の伝統は非常に強く、初代に大きな影響を受けているからです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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