パワフルさに不釣り合いなボディ アウディ200 アバント・クワトロ・ターボ ボルボ850 T-5R エステート (2)

公開 : 2023.10.15 17:46

未来的なデザインで10年の差を感じさせない

200 アバント・クワトロの方が1世代古いが、未来的なデザインでそこまでの差を感じさせない。ドライバーへ向けて角度の付いたダッシュボードには、沢山のスイッチが並んでいる。

スペンサーは、このデザインに合致する、ブラウプンクト社製のステレオデッキを組んだ。テクノチックな雰囲気が、クルマのコンセプトに合っている。ターボブースト計はデジタル。クラフトワークのBGMが、気分を盛り上げそうだ。

ボルボ850 T-5R(1995〜1996年/英国仕様)
ボルボ850 T-5R(1995〜1996年/英国仕様)

850 T-5Rのインテリアは、むしろクラシカル。こちらにも、ダッシュボード上にスイッチが沢山並び、上級な印象を与える。ドライビングポジションは座面が高めで、背もたれも起き気味。高性能ワゴンというより、有能なファミリーカー的といえる。

インテリアを飾るウッドパネルは、少し時代錯誤。1997年のV70 Rでは、カーボン・トリムを選べたのだが。ステアリングホイールは直径が大きく、前方視界にリムがかかる。本質的なボルボらしさが、しっかり残る。

しかし、発進させると溢れんばかりのパワーへ驚く。さほど右足を傾けずとも、フロントタイヤのグリップ力が追いつかなくなる。アスファルトをゴムが擦る、スキール音が聞こえてくる。

試乗車の4速ATは、スポーツマインドを宿す。意欲的に扱えば、レッドライン目掛けて回転数を引っ張り、少しの緩さを伴いながら太いトルクを伝達する。

バランスに優れる200 アバント・クワトロ

滑らかな路面では、850 T-5Rは極めて爽快。路面へ呼吸を合わせるように、流暢に身をこなす。ところが古い舗装で荒れてくると、硬めのサスペンションが車内へ衝撃を伝え始める。

直5エンジンの搭載位置は低く後方といえるが、これ以上足回りをソフトにすると、アンダーステアが酷くなるだろう。4速ATは、走りの印象を高めてはいない。

ボルボ850 T-5R(1995〜1996年/英国仕様)アウディ200 アバント・クワトロ・ターボ(1985〜1991年/英国仕様)
ボルボ850 T-5R(1995〜1996年/英国仕様)アウディ200 アバント・クワトロ・ターボ(1985〜1991年/英国仕様)

乗り比べると、サスペンションとシャシーが調和している感覚を抱きにくいが、200 アバント・クワトロの方がバランスに優れる。四輪駆動システムの頼もしいトラクションで、欧州大陸を縦断するようなスキー旅行へ好適な、エクスプレスになったはず。

初期の200 アバント・クワトロは、243psの850 T-5Rより80psほどパワーで劣る。確かに直線加速では明らかな差を開けられる。とはいえ、カーブが連続する区間では、面白いほど四角いテールを追い回せる。

850 T-5Rは、ネオクラシックとして一定の地位を築いている。今回は違ったが、5速MTを積んでいれば、一層の好印象を残したのではないかと思う。同時に、200 アバント・クワトロも多くの特徴を備え、魅力では負けていない。

かつての、英国ツーリングカー選手権での接戦を見ているようだ。1996年のシーズンでは、アウディ・クワトロ S4が850 サルーンを破り優勝した。だが1998年には、ボルボS40が競り勝ち、スウェーデン・メーカーにタイトルを与えたのだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジャック・フィリップス

    Jack Phillips

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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