現実を突きつけるお値段 トールマン205 GTi ヒョンデi20 N 期待通りのホットハッチか?(2)

公開 : 2023.11.11 09:46

往年のホットハッチ、プジョー205 GTiをレストモッドしたトールマン 現在のラリーで存在感を高めるヒョンデ 英国編集部が比較試乗で実力へ迫る

キーを捻った瞬間から明らかに荒々しい

車内空間は、トールマン・エディション205 GTiの方が、ヒョンデi20 Nより狭く短い。ピラーが細く、ガラスエリアが広く、運転席は開放的。周囲の状況も確認しやすい。

ドライビングポジションで勝るのは、設計の新しいi20 N。サイドボルスターの高いシートやステアリングホイールは調整域が広く、ペダル配置も適正。長時間を快適に過ごせるだろう。

レッドのトールマン・エディション205 GTiと、ホワイトのヒョンデi20 N
レッドのトールマン・エディション205 GTiと、ホワイトのヒョンデi20 N

操縦系の感触には適度な軽さと丸さがあり、1.6L 4気筒ターボエンジンは低回転域からトルクが太い。気張らず活発に運転できる。

トールマン205 GTiが、トリッキーというわけではない。だが、キーを捻った瞬間から、明らかに荒々しい。XUユニットらしいアイドリングへ落ち着くものの、レーシングクラッチが組まれ、滑らかに発進するには繊細なペダルさばきが欠かせない。

低速域での印象は、確かに懐かしさを誘うものだが、新鮮な部分も入り交じる。モーテックECUはバイワイヤ制御で、スロットルケーブルは存在しないが、アクセルペダルに対する反応は従来どおり即時的。エグゾーストノートはドライで勇ましい。

回転数が上昇するほど、オリジナルの205 GTiでは叶えようがなかった、パワフルさが表出していく。7500rpmまで吸い込まれるようにタコメーターの針は回転し、サウンドは激しさが増し、鋭く速度が高まる。

爽快な反応と感触は当時のまま

トールマン205 GTiの車重は約200kg軽量ながら、最大トルクは5.9kg-mも低い。見通しの良いストレートでは、i20 Nの後ろに回らざるを得ない。自然吸気だから、秘めたパワーを引き出すには、しっかり引っ張る必要もある。

とはいえ、キビキビとしたシフトレバーの動きが気持ちいい。回転数に応じてサウンドも変化し、まったく苦ではない。

レッドのトールマン・エディション205 GTiと、ホワイトのヒョンデi20 N
レッドのトールマン・エディション205 GTiと、ホワイトのヒョンデi20 N

パワーステアリングが追加されているものの、操舵には力がいる。フィードバックは繊細で、アスファルトをフロントタイヤが掴む様子が、手のひらへ明瞭に伝わる。オリジナルの205 GTiのステアリングに備わった、気まぐれな癖は抑え込まれている。

タイトコーナーからの立ち上がりで200馬力を与えようとすると、リミテッドスリップ・デフを介したトルクステアが生じる。それを除けば、基本的に反応は正確。爽快なフィーリングは、当時のままだ。

コーナリングスピードやグリップ力でも、新しいi20 Nには及ばない。その一方で、オリジナルより間違いなく侵入速度は上昇しており、エイペックスへ意欲的にノーズが食い込んでいく。路面変化の影響も受けにくい。

急にアクセルペダルを傾けても、落ち着きは失わない。アップデートされたサスペンションとタイヤのおかげで、ドライバーがきっかけを与えない限り、テールは安定している。

ブレーキも見事。ABSは備わらないものの、i20 Nに劣らない感触がペダルにあり、不満ない制動力を引き出せる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

トールマン205 GTi ヒョンデi20 N 期待通りのホットハッチか?の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

プジョーの人気画像