アウディS6 サルーン/アバント

公開 : 2012.12.18 18:51  更新 : 2017.05.29 18:18

アウディA6の高性能特化モデルといえば、真っ先に思い出すのは、2003年に先々代C5系で追加されたRS6だ。BMW M5に対抗すべく追加されたこのクルマは、強烈に締め上げられたアシと、4.2ℓV8をツインターボ過給して得た450psの強烈なパワーで我々の度肝を抜いた。M5がまだ、しなやかに動くアシと、繊細感そこはかとなく漂う400psの自然吸気V8を積むE39系だったから味わいの違いは鮮明で、アウディの攻勢を端的に表明していた。

次の世代のC6系では2006年デビューS6が印象に残った。このころ急に乗り心地を追求し始めたアウディの転換を典型的に表すように、このS6は基準車よりも滑らかに動くのではないかと思うようなアシの設定を施されていた。ただし、その一方で、エンジンはランボルギーニにも提供していたV10自然吸気で、最高出力は435ps。追って登場したRS6の580psほどではないが馬力は有り余り、危うさすら感じさせる加速力をそれは確保していた。

そして現行C7系のS6が、この8月に登場した。

新しいS6は、シャシーに関しては先代C6系の方向性をさらに推し進めた方策を採ってきている。エアサスを装備したのだ。当然ながら乗り心地は明確に柔和な方向に寄る。

一方で、エンジンは当世流行のダウサイジング過給である。先代の5.2ℓV10自然吸気に換えて、4.0ℓV8直噴ツインターボを載せてきたのだ。性能値は先代と同等の420psと56.1kgmを確保しつつ、燃料消費率を向上させたあたりは流行りのコンセプトそのものであるが、その上に気筒休止システム等を導入して、さらなる上積みを図っている。ちなみに、そのツインターボはバンク間に押し込まれるBMWと同じ方式である。

さて、そういう新型S6の一番の美点は、初めて接してすぐにクルマの動きが掴みやすく、その高性能を使いやすくなっていることだと思う。

実は乗る前はその点には懐疑的だった。なにしろS6には電制可変ギヤ比ステアリングが装備されるのだ。初めてアウディのそれを体験したのは導入されたばかりのRS5だったが、このときは与えた舵角やそのとき手に伝わってくる感触と、実際に現出する前輪横力ゲインの関係が混乱しており、先代5シリーズでBMWが導入したときのそのシステムと同じく、クルマとのコミュニケーションを阻む邪魔者以外の何もでもなかった。ところが、改良型RS5もそうだったが、電動アシストと組み合わされた最新のアウディ製可変ギヤ比ステアは、操作するこちらの意思と発生するクルマの動きの間に齟齬が少なくなった。観察してみると、運転モードを甘口側に固定したときに、舵角120度で曲がっていたコーナーが、辛口側に切り替えると90°ほどで行けてしまうから、明らかにギヤ比の増減速は行われているのだが、切り始めて途中からギヤ比を増速したりする制御はあまり使っていないようで、連続性の担保には気を遣った仕立てになっている模様である。

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