アウディS8

公開 : 2012.12.18 18:47  更新 : 2017.05.29 18:18

2代目代D3系以来、総アルミ製モノコック構造を採用しているA8。その高性能版であるS8は、使うV8ツインターボにしろ、駆動系の構成にしろ、S6のそれと同巧のものを使っている。エンジンの能力はS6の420psと56.1kgmから、520psと66.3kgmへと大幅に上がっているが、排気量は変わらぬ4.0ℓであり、圧縮比を下げて最大過給圧を上げてターボを使って、その数字を得たようだ。また、シャシー関連では緩衝装置にエアばねを用いるところも同じだ。

ではS6とS8の違いはボディのみじゃないかという話になるわけだが、寸法で行くと全長でS8は21.5cm長く、ホイールベースで8.5cm長いだけで、並べて眺めても、これはクラスが違うと痛感するほどの視覚的格差はない。これには、今世代でライトなどの意匠をA6と統一したことも効いているのかもしれない。前の世代のように全く違う方向のデザインが施されていれば寸法的に大差はなくともアピアランスの違いは明瞭だったのだが。また、車重においてもS8とS6の差は僅か60kgである。それで済んだところにアルミ車体をわざわざ使った意味があるのだが、では他の構成要素が非常に近いS8とS6の走りがどう違うのかとなると事は微妙になってくる。

だが、実際に走らせてみるとS8はS6とはかなり色合いが異なっていたのだ。まず上屋の動きが締まっている。+100psを受け止めるためにエアサスを硬める方向で使ってはいるのだろうが、それよりもボディの差が大きいと感じた。確かに車重は大差ない。だがモノコックをアルミ化するということは、重心から一番離れたところの外殻部分が軽くなるということであり、ならばロールやピッチやヨーの慣性モーメントは少なくなる。そのおかげも間違いなくあって、S8はS6よりも締まった動きで走ったのである。いかに高性能版であろうとも、Lセグメントなのだから、EセグメントのS6よりも走りはダンナ仕上げになるだろうという予想は見事に裏切られるのだ。

一方でエンジンは、オーバーブーストを使って瞬間的な加速の脅しを効かすような520psではなく、どこまでも加速が衰えない大人の仕上げ。そこはさすがにLセグメントであった。

(文・沢村慎太朗 写真・花村英典)

アウディS8

価格 1580.0万円
0-100km/h 4.2秒
最高速度 250km/h
燃費 9.8km/ℓ
CO₂排出量 237g/km
車両重量 2080kg
エンジン形式 V8DOHCツインターボ, 3992cc
エンジン配置 フロント縦置き
駆動方式 4輪駆動
最高出力 520ps/5800-6400rpm
最大トルク 66.3kg-m/1700-5500rpm
馬力荷重比 250ps/t
比出力 130ps/ℓ
圧縮比 9.3:1
変速機 8段A/T
全長 5145mm
全幅 1950mm
全高 1455mm
ホイールベース 2995mm
燃料タンク容量 90ℓ
荷室容量 510ℓ
サスペンション (前)ダブルウィッシュボーン
(後)トラペゾイダル
ブレーキ (前)Vディスク
(後)Vディスク
タイヤ 265/35R21

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