ボルボ安全研究の第一人者が語る、今日から実践できる安全のヒント【子どもの命を守るのは大人の知識】

公開 : 2026.07.28 17:05

ボルボのセーフティセンターでシニア・テクニカル・スペシャリストを務めるロッタ・ヤコブソン博士による『子どもの車内安全に関するメディアセミナー』に黒木美珠が参加。今日から実践できる安全の知識をレポートします。

ボルボが安全を研究し続けてきた、安全とその重さ

ボルボのセーフティセンターでシニア・テクニカル・スペシャリストを務める、ロッタ・ヤコブソン博士によるセミナーに参加しました。35年以上にわたり自動車安全の研究・開発に携わってきた、この分野の第一人者です。

筆者は数年前、一般財団法人日本交通安全教育普及協会の『チャイルドシート認定指導員』を取得しました。チャイルドシートを正しく着用しなかったが故に子どもが亡くなってしまうニュースを目にするたびに、正しい知識があれば防げたはずの事故を少しでも減らしたい、という思いから取得したものです。

ボルボのセーフティセンターでシニア・テクニカル・スペシャリストを務めるロッタ・ヤコブソン博士。
ボルボのセーフティセンターでシニア・テクニカル・スペシャリストを務めるロッタ・ヤコブソン博士。    ボルボ

そのため、安全への姿勢で知られるボルボの安全思想には、以前から強い関心があり、今回のセミナーへの参加は楽しみでした。

「メディアが知らないと、世の中の大人は正しい知識を得ることができない。大人が知らないと、子供の安全を教えてあげる人がいない」という言葉から始まったセミナーは、冒頭から引き込まれるものがありました。

スクリーンには1950〜60年代の映像が流れ、こんな昔からすでに自動車安全の研究が始まっていたことに驚きました。ボルボの安全思想の根底にあるのは『人間が中心』という考え方。『クルマが安全に走れる』から始まり、『人が守られる安全』、そして『衝突を回避する安全』へと進化してきたといいます。

その象徴ともいえるのが、1959年に開発された3点式シートベルトです。骨盤と肩を支えるこの仕組みは今も有効で、「なぜなら人間は変わらないから」というロッタ博士の一言が印象的でした。

8万人以上の実際の事故データを収集・分析し、現場で得た知見を安全技術に活かすサイクルが続いているといいます。さらに、ボルボの研究結果が他メーカーのクルマにも反映されているという話に、このブランドが自動車全体の安全水準を底上げするのに貢献していることを再認識させられました。

4歳まで後ろ向き。知っているようで知らない、チャイルドシートの正解

セミナーのメインテーマは、衝突時における子どもの安全です。ボルボが推奨するのは、最低4歳まで後ろ向きチャイルドシートを使用すること。さらに身長140cmに達し、かつ10歳以上になるまでブースターシートを使用することを勧めています。

後ろ向きチャイルドシートの発想は、宇宙飛行士の着座姿勢から着想を得たもの。スウェーデンのチャルマース工科大学のアルドマン教授によって1964年にプロトタイプが作られ、1967年に市販化されました。

後ろ向きチャイルドシートは1960年代から進化し続けている。
後ろ向きチャイルドシートは1960年代から進化し続けている。    ボルボ

なぜ後ろ向きなのか。交通事故の大半は正面・前方衝突で、スピードが出ている場合が多い。子どもは頭が重く大きく、首が細くて弱いうえに、新生児の首の骨はまだ軟骨で、骨になりきれていない状態です。それを後ろ向きに乗せることで、衝撃を頭部と胴体に分散させることができるのです。

「身長が達しても骨が達していないこともある」という言葉には、ハッとさせられました。

また、ブースターシートが必要な理由も明快。子どもには骨盤の突起がないため、座る位置が低いとお腹を圧迫してしまいます。ブースターシートによって骨盤で体を支え、シートベルトを正しい位置に当てることができるのです。

ショルダーベルトは首の方に来ていても、衝撃時はずれ込むため問題ないそうです。厚手のジャケットを着ているとベルトに大きなたるみができてしまい、本来の性能を発揮できないため、乗車時は脱いだほうがよいという指摘は、大人にも当てはまる話でした。

記事に関わった人々

  • 執筆

    黒木美珠

    Miju Kuroki

    1996年生まれ、静岡県出身。自動車系YouTuberとしての活動を経て、自動車ジャーナリスト(の卵)へと転身。自身の車中泊による日本一周の経験をきっかけに、クルマを通じたライフスタイルの可能性に魅了されるようになる。現在は、輸入車デビューを目指す連載をはじめ、車中泊視点での車両レビューや、YouTubeチャンネル『AUTO SOUL JAPAN』の運営など、多角的に活動中。クルマを単なる移動手段や機械としてではなく、その背景にある開発者の想いや、クルマを取り巻く文化、そして『移動すること』そのものの価値を伝えることをモットーとしている。

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