ポルシェ911 GT3ほどは尖らず アストン マーティン・ヴァンテージ S(2) オールラウンド・スポーツカーの着実な進化版

公開 : 2026.07.24 18:10

15ps増のV8ツインターボに、一層スポーティなボディやシャシーを得た、アストン マーティン・ヴァンテージ S。更なる速さと音響的な喜びを得つつ、存分に運転を楽しめる懐の深さは相変わらずです。UK編集部が試乗します。

ベース以上の速さに音響的な深い喜び

680psの最高出力を得た、アストン マーティンヴァンテージ S。標準仕様から15ps増しているが、現実的には違いを体感することは難しい。0.1秒短縮された0-100km/h加速は、ローンチコントロールの最適化による成果だと同社は認めている。

それでも0-161km/h加速や、約50km/hから110km/hへの中間加速も、通常のヴァンテージを僅かに凌駕する。パワーが劣るポルシェ911 GTSの方が、より速いとしても。

アストン マーティン・ヴァンテージ S(英国仕様)
アストン マーティン・ヴァンテージ S(英国仕様)

4.0L V8エンジンは低音の唸りを骨太に響かせ、回転上昇とともに音質はエッジーに転じ、極めて刺激的。8速ATはギア比が低くクロスしており、反社会的な速度へ踏み込まずとも、高域を堪能できるのがうれしい。

同時に、加速時にはLSDの動作音が、アクセルオフ時にはアフターファイアの破裂音が、後方でオーバーラップ。高負荷時の排気音も上品さを失わず、音響的な喜びは深い。

積極的に運転を楽しめる懐の深さ

ブレーキは、速度や路面を問わず強力。サーキットを攻め込んだ後半には、ややペダルのストロークが伸びていたが、明らかなフェードには至らなかった。

8速ATは、デュアルクラッチATと同等の変速速度を叶えてはいない。トルコンらしく、滑らかさに強みがあるともいえない。もっとシャープ&スムーズなら望ましい。

アストン マーティン・ヴァンテージ S(英国仕様)
アストン マーティン・ヴァンテージ S(英国仕様)

シャシーの改良は、ポルシェ911のGT3ほど尖ってはいない。シリアスさは増しても、車幅感覚を掴んだら、積極的に運転を楽しめる懐の深さに変わりはない。

ステアリングは一層クイックに反応し、正確で滑らかで、手応えが頼もしい。「S化」でよりシャープになったぶん、セルフセンタリング性や、ワダチで振られるワンダリングも若干強まったものの、好印象を濁すほどではないだろう。

ライバルより親しみやすい操縦性

カーブでのアンダーステアは、慌てず右足を傾け、パワーを展開すれば打ち消せる。挙動変化は自然かつ線形的で、電子制御は介入度を調整でき、スキルに応じた走りへ没入可能。フェラーリ・アマルフィやマクラーレンアルトゥーラより、親しみやすい。

サスペンションは路面の凹凸を巧妙に処理しつつ、減衰特性は見事で、姿勢制御は極めて安定。デフォルトのドライブモードはスポーツで、乗り心地は通常のヴァンテージより硬めにある。普段使いなら、コンフォートへ和らげたいところ。

アストン マーティン・ヴァンテージ S(英国仕様)
アストン マーティン・ヴァンテージ S(英国仕様)

走行中の車内ノイズは、約110km/hで72dBAと大きめ。911 GTSでは、71dBAだ。

運転支援システムは、概ね動作が滑らか。アダプティブ・クルーズコントロールは、メルセデス・ベンツの流用だと推測できる。車線維持支援や制限速度警告は反応が少し過敏かもしれないが、必要なければオフにできる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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