ゴルフGTIと競ったホットハッチ フォード・エスコート XR3/XR3i 英国版クラシック・ガイド 前編

公開 : 2022.10.30 07:05

エスコートとして初めてFFレイアウトが与えられた3代目。初代ゴルフGTIのライバルを、英国編集部がご紹介します。

FFへ一新したMk3のエスコート

FRレイアウトを改め、当時5億ポンドの開発費用を掛けてFFへ一新した3代目のMk3 フォード・エスコート。ドイツ人デザイナー、ウーヴェ・バーンセン氏によるスタイリングと、新しいオーバーヘッドカム・エンジンで、瞬く間に英国のベストセラーになった。

社運をかけたモデルの1つといえ、商業的な成功を収めた。だが同時に、イメージをリードする高性能なエスコートも必要とされた。モータースポーツでの活躍は予定になかったが、先代までのRSシリーズに代わる存在が求められていた。

フォード・エスコート XR3/XR3i(Mk3/1980〜1986年/英国仕様)
フォード・エスコート XR3/XR3i(Mk3/1980〜1986年/英国仕様)

そこで1980年の当初から設定されたのが、今回ご紹介するXR3だ。RSシリーズのようにラリー参戦を前提としたホモロゲーション・マシンではなく、スポーティな仕様に留まっていたが。

ちなみに、この名称はマーキュリー・クーガーの高性能版、XR-7から転じたものだった。また1982年にはRS 1600iも登場。世代末期にはRSターボへ展開している。

3代目エスコートのXR3では、新しいヘミヘッドの1.6L 4気筒エンジンに、ツインチョーク・ウェーバーキャブレターをドッキング。97psの最高出力を与え、公道では充分な速さを発揮した。

フォードがライバル視していたのは、FFホットハッチの元祖といえるフォルクスワーゲン・ゴルフ GTI。それでも、最高速度では空力特性で勝る初代GTIには及ばず、乗り心地や限界付近の操縦性でも後塵を拝してしまうが。

XR3iは最高速でゴルフ GTIを僅かに凌駕

スタイリッシュで手頃な価格のエスコート XR3は、飛ぶように売れた。スポイラー付きで約5000ポンドは、若者の気持ちを掴むことに成功した。

「多くの人の注目を集める見た目は素晴らしく、エスコートの仕上がりは魅力的。これほど好意的に受け止められる量産車は珍しい」。と、当時の自動車誌は評価している。

フォード・エスコート XR3/XR3i(Mk3/1980〜1986年/英国仕様)
フォード・エスコート XR3/XR3i(Mk3/1980〜1986年/英国仕様)

そんな好調を加速させるべく、フォードの高性能モデルを手掛けるスペシャリスト・ビークル・エンジニアリング(SVE)部門も参画。燃料インジェクションでパワーアップしたXR3iが1982年に投入される。

3代目エスコートは、総じて硬めの乗り心地に不満が出た。フォードはその声を聞きサスペンションを改良。XR3iは最高速でゴルフ GTIを僅かに凌駕しただけでなく、乗り心地や操縦性も改善され、シャシー能力は接近していた。

1986年には、XR3仕様のシャシーが与えられたカブリオレが登場。ボディシェルはドイツのカルマン社によって強化され、引き締められたサスペンションを受け止めた。当時は高価といえたが、現在はハッチバックより手頃に流通している。

前後のスポイラーに、四葉のクローバーと呼ばれたアルミホイールが特徴のXR3やXR3iは、現役時代には英国で最も多売のホットハッチになった。特にXR3は、3代目エスコートの総生産数の10%を占めている。初年度だけで1万1000台が売れたという。

トランスミッションは5速マニュアル。実用的で運転が楽しい、クルマ好きのためのハッチバックだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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