いま1番運転の楽しいEV降臨! ニュル8分切りの650ps ヒョンデ・アイオニック5 Nへ試乗

公開 : 2024.04.09 19:05

トップレベルの動的能力 タイカン以上の回頭性

ドライブモードの変化度はかなりワイド。広いサーキットを数周しただけでは、すべてを理解しきれない。秘めた実力の全貌を、一般道で引き出すことも不可能だろう。

ドライブモードを1つ引き上げ、合成ノイズと変速機能をオンにしてコースイン。ホットハッチのi30 Nに搭載される8速ATの開発技術者が、このシステムにも携わったとか。

ヒョンデ・アイオニック5 N(欧州仕様)
ヒョンデアイオニック5 N(欧州仕様)

内燃エンジン車に乗り慣れている筆者にとって、この2つのギミックはサーキットで有効。クルマの状態を把握する要素として、エンジンノイズがあるとブレーキングポイントやコーナリングラインを探りやすい。

合成された音だから、確かに多少の違和感はある。内燃エンジンが珍しい機械に感じる時代が来たら、余計な音に聞こえるかもしれない。そんな時は、オフにすれば良い。少なくとも筆者は、この機能を気に入った。

アイオニック5の動的能力は、トップレベル。車重は2235kgと軽くなく、ダンパーをハードな状態にしても、加減速時のピッチや旋回時のロールは小さくない。そのかわり、負荷に応じてステアリングが重くなり、確かな手応えが伝わってくる。

ブレーキも、バイワイヤ制御なことを感じさせない。ペダルの重み付けは、一般道での使い勝手を考えれば丁度いい。

ブレーキを引きずりながらコーナーへ突っ込めば、フロントノーズが効果的に食らいつく。前後のトルクバランスを変更せずとも、ポルシェタイカン以上の回頭性を披露する。コーナリングラインの調整域も、より広い。

一般道でも充足感はずば抜けて高い

リアモーターの方が僅かにパワーが勝り、タイヤは275/35 R21のピレリPゼロ。前後の重量配分は、ほぼ均等だ。スタビリティ・コントロールをオフにすれば、ドライバー次第で思い切り振り回すこともたやすい。

コーナーの頂点を過ぎたら、グリップを活かしつつテールスライド。高速コーナーでも、僅かにオーバーステア傾向を示すほど。同社の技術者は、「ドリフトマシンではありませんが、ドリフトは可能です」。と控えめに話すが、極めて楽しい。

ヒョンデ・アイオニック5 N(欧州仕様)
ヒョンデ・アイオニック5 N(欧州仕様)

ドリフト・オプティマイザーも特筆に値する。濡れたスキッドパンではアクセルレスポンスが尖すぎる印象ながら、テールスライドの練習には好適だろう。

一般道でも、充足感はずば抜けて高い。欧州仕様として仕上がったアイオニック5 Nは、若干しなやかなダンパーを得た。それでも、通常のアイオニック5よりはハード。ステアリングは正確で、反応がシャープで小気味いい。

荒れた路面でも安定性は高いが、鋭敏さも備わる。フォーカス RSだけでなく、三菱ランサー・エボリューションにも通じる個性がある。

4本のタイヤがアスファルトを掴み、加速力も驚異的。フォルクスワーゲン・ゴルフ Rのように。ただしアイオニック5 Nは、アクセルオンでのライン調整が一層滑沢だ。

確かに、車重は2.2tを超えるため、妖精のように身軽なわけではない。しかし、適正な運転姿勢と正確な操縦系が相乗し、カーブへ積極的に飛び込んでいける。ハードに責め立てるほど、アイオニック5 Nは小さく感じられていく。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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