ビッグモーター以下! 前代未聞! 旭川トヨタの「封印不正」はどれくらいダメなこと?

公開 : 2024.04.09 17:45

1986年からずっと「封印不正」を行っていた

やってはいけない封印の再利用を旭川トヨタは長年「不正とは知らず」やってきた。

その不正に対して同社は令和6年3月23日付で公式サイトに代表取締役社長 西川弘二の名前で「封印受託業務に対する弊社の不適切な対応に関するお詫び」を出している。現在判明の内容として書かれている内容は以下となる。

丸い環部分の「封かん」は自分で取り付けてOK  運輸支局にも「封かんの取付け要領」が掲示されている
丸い環部分の「封かん」は自分で取り付けてOK 運輸支局にも「封かんの取付け要領」が掲示されている    加藤久美子

【現在、判明の内容】
・旭川ボデーサービスセンターにて、車両修理のためにリアナンバープレートの封印冠を外す必要がある場合は、封印冠を壊し、再封印の際は新しい封印冠での封印が必要となりますが、封印冠を壊さずに再使用・取付けをしておりました。

・不正の件数につきましては、現在、対象店舗と期間を拡げ調査中でございますが、旭川ボデーサービスセンターの令和4年12月1日から令和5年11月30日まで社内調査した結果では、85件の不正を確認しております。

まだ詳細は調査中とのことであるが同社は地元メディアの取材に対して「旭川ボデーサービスセンターができた1986年からずっと工場内で再封印を行っていた」「それが不正にあたるとは思わなかった」と回答。

道北エリアで販売台数トップのトヨタ販売店が40年近く不正とは知らず再封印をしていたのは本当に驚きである。そして、不正に対する同社の対応として「旭川運輸支局管内の封印取付けの受託業務を3月1日付で自主返納させていただきました」としている。

封印取付け受託業務の「自主返納」とはあまり聞いたことがない言葉だが、行政処分の一種なのだろうか?

「自主返納」に法的な位置づけなし?

詳しいことを国交省自動車情報課に聞いてみたところ、意外な答えが返ってきた。自主返納に法的な位置づけはないとのことである。

「自主返納というのは、旭川トヨタ側で使っていることばで法的な位置づけがある処分ではありません。旭川トヨタについては、現在事実関係の確認を行っているところであり、処分内容はその後に決定します。

運輸支局の敷地内であればオーナー自身が封印を外すのはOK
運輸支局の敷地内であればオーナー自身が封印を外すのはOK     加藤久美子

国土交通省が自主返納で良いとした事実はありません。自主的に封印の取付けをやめることで これ以上不適切な封印がなくなるので、これを認めたに過ぎません。自主返納をもって(行政)処分をしたとするものではありません」(国交省自動車情報課)

なるほど、自主返納は行政処分ではなく、勝手に旭川トヨタが使っている言葉のようである。さらに封印取付けの受託業務を「返納」(=終了)する際にはこれまた道路運送車両法にて厳格な取り決めが存在する。

・事業場の位置の変更等の承認 第十五条の三
【封印取付受託者は、事業場の位置を変更しようとするとき、又は封印の取付けの業務をやめようとするときは、あらかじめ、運輸監理部長又は運輸支局長の承認を受けなければならない】

つまり、自主返納という制度自体も存在しないが、封印取付け業務をやめる場合は運輸監理部長又は運輸支局長の承認を受けなければならないため自主返納と称して勝手にやめることはできないのである。先述の国交省自動車情報課も「自主返納で良いとした事実はありません」としている。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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