アルピーヌA290を超える?:ミカ・ミーオン 「小型・軽量」の面白さ ベスト・ファンEV(4)

公開 : 2025.03.15 09:45

目からウロコのステアリング 低速域での楽しさ

それでも、ステアリングの反応は目からウロコ。駐車場の速度域でも充分に軽く回せ、高解像度な情報が手のひらへ逐一伝わってくる。反応は極めて正確で、ボディを狙ったとおりに導ける。

乗り心地はしなやか。シャシーバランスにも優れ、A290を含む5台とは異なるマナーで、ワインディングを存分に駆け回れる。リミテッドスリップ・デフは、組まれていなかったが。

ミカ・ミーオン(プロトタイプ/英国仕様)
ミカ・ミーオン(プロトタイプ/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

単体で楽しむ限り、A290も素晴らしい。グリップが抜ける様子を感知できるし、トルクステアもよく抑え込まれている。しかしミーオンと比べると、鮮明度で劣ることは否めない。感触を確かめながら、滑らかに操ることが難しく感じられてしまう。

耳がちぎれそうなほど寒いものの、スピード感は想像以上。少し気張りすぎたように感じてスピードメーターを確認しても、グレートブリテン島の一般道の制限速度、97km/hを超えてはいなかった。

駆動用モーターはBYD由来。加速時には、ザラついたエンジンのような音を放つ。これが、運転体験を一層濃いものにしている。最大トルクは31.6kg-mだが、軽さとモーターの特性が相まって、倍近くあるかのよう。低速域で楽しめるクルマは、本当に面白い。

EVが進化する余地はまだまだある

ミーオンは、駆動用バッテリーの軽量化・小型化へ、大きな期待を抱かせてくれる。航続距離は161kmだが、週末の喜びのためと割り切ったクルマは、電動でも既にすこぶる楽しい。ケータハムのように。

車重1497kgの電動ハッチバックと、675kgの電動ビーチバギーを並べるのはフェアではないだろう。とはいえ、発展途上の電気自動車に、進化できる余地がまだまだあることは間違いない。

ミカ・ミーオン(プロトタイプ/英国仕様)
ミカ・ミーオン(プロトタイプ/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

今回の5台のように、実用にも耐える楽しいバッテリーEVは揃いつつある。2005年のルノー・クリオ(ルーテシア)R.S.200の印象を、A290 GTSは越えてはいないかもしれない。だがクルマは進歩し続ける。来年は、更に良い運転体験を味わえるに違いない。

ミカ・ミーオン(プロトタイプ/英国仕様)のスペック

英国価格:7万5000ポンド(約1463万円)
全長:3061mm
全幅:1613mm
全高:1177mm
最高速度:161km/h
0-100km/h加速:3.5秒
航続距離:161km
電費:8.0km/kWh(予想)
CO2排出量:−
車両重量:675kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:20.0kWh
急速充電能力:60kW
最高出力:218ps
最大トルク:31.6kg-m
ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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