アウディR8 e-トロン・プロトタイプ

公開 : 2015.03.12 23:50  更新 : 2017.05.29 18:14

R8は標準で電動シートであったが、e-トロンの場合は手動調整式を採用。カーボンファイバー製パーツを用いた軽量化の一貫であり、シート/ステアリングともに前後上下方向に調整可能だ。

始動するにはスターター・ボタンを押してギアをDにセット、電制ハンド・ブレーキを解除するという、いつもと変わらぬ方法をとる。

アクセル・ペダルを踏み込むには、一般的な乗用車のそれよりも踏力を要すが、ペダルを踏んだ量と加速力に違和感はなく、極めて直感的に到達したいスピードを得ることが可能だ。またほんの僅かな踏力調整に対しても従順に応えてくれる。電気自動車だからといって、特別な ’心の準備’ は何も必要ないのである。

センターコンソールのナビゲーション・スクリーン下に据えられた大きな赤いボタンは、サウンド・ジェネレーターをオンにするためのもの。これを押せば5.2ℓ V8ユニットを搭載したR8と同様の咆哮を耳にできる。

しかしながらハッケンバーグ氏は、そんな ’真似事’ にはあまり興味のないご様子。無理に脚色を加えたり、あるいはモーター音を抑えこんだりするよりも、もっとやるべきことがあるという考えのようだ。

したがって ’エンジン音発生装置’ はオフにし、われわれ一行はスイスを横断することにした。

シート後方に背の高いバッテリー・パックを搭載しているためリア・スクリーンは黒い板材で覆われていた。そのかわりにリアビュー・モニターが板材部分に設置されており、その映像は6.8インチのAMOLED(アクティブマトリクス式有機EL)ディスプレイに映しだされる。

完全に後方視界がゼロであるため、バック時はディスプレイの映しだす映像に頼るほかないが、遠近感や車体幅を認識するのにさほどの時間は要さない。「市販する際にもこのシステムを採用する予定です」とのことだ。

ガス・ペダルを踏み込んだ際の加速感は内燃機関をもつクルマでは得られないもので、クルマが前に進むというよりも、自分以外の、風景を含む全てが前に突進していくような感覚なのである。

車重こそ1840kgとなかなかの重さがあるが、体感的には数値よりも遥かに軽く感じられる。ただし超ライトウェイト・モデルの用にひらりと舞ってしまいそうな類のものではなく、高速時の安定感は盤石そのものである。

0-100km/hタイムの公表値は3.9秒。609psを叩きだすR8 V10プラスまであと0.7秒のところまできており、開発初期のe-トロン・プロトタイプより0.3秒短縮されている。

最高速度は現時点では200km/hに制限されているが、プロダクション・モデルになった時にはさらにうえの速度域まで到達できるようになるとのこと。もう一度いうが、現時点でもとてつもない瞬発力を兼ね備えている。

電子制御式のステアリングによるフィードバックの絶対量は多く、トルク・ベクトリング・システムのおかげで両輪に流れるトラクションが途切れることもない。操舵フィールも現時点でも極めてナチュラルである。

ターンイン時の入力に対する反応も極めて迅速で、溢れんばかりのグリップとボディ・コントロールのおかげで、”このまま販売してもいいじゃん” とさえ思えてくる。

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