「ディーゼルこそ至高」 量産化に至らなかった500psのアウディ『R8 V12 TDI』を振り返る【UK歴史アーカイブ】
公開 : 2026.03.28 11:45
2000年代初頭、R8やA3など、ディーゼルエンジンを搭載したアウディの高性能フラッグシップモデルが次々と発表された時期があります。でも実際に発売されたのは1車種のみ。短い「ディーゼル全盛期」を振り返ります。
世界初のディーゼル・スーパーカー
ル・マン24時間レースで数年にわたり圧倒的な強さを誇ったアウディは、2005年12月、次回の参戦車両がディーゼル車となることをサプライズ発表した。それが『R10 TDI』だ。
ディーゼル車のル・マン参戦は初めてではなかったが、総合優勝を果たしたのは2006年のR10 TDIが初めてだった。さらに、その後2年連続で優勝している。

当時、欧州ではCO2排出量の削減が求められ、ディーゼル車に対してガソリン車よりも低い税率が適用されていたため、アウディにとっては優れたマーケティングツールとなった。
その結果、2008年の初め、アウディはル・マンでの活躍にインスパイアされたディーゼルエンジン搭載の高性能モデルを次々と発表するという、あまりにも短いピークを迎えた。
その先駆けとなったのが、2008年1月に「世界初のディーゼル・スーパーカー」として発表された『R8 V12 TDI』のコンセプトモデルだ。確かに物議を醸すアイデアではあったが、その詳細が明らかになるにつれ、人々はどんどん魅了されていった。
新開発のツインターボチャージャー付き5.9L V12エンジンを搭載したコンセプトモデルは、既存のR8に搭載される4.2L V8ガソリン(420ps)よりも高い出力(500ps)と約2倍のトルクを発揮しながらも、燃費は約10km/lを達成できると言われていた。
そしてドラマチックなことに、オープンゲート式の6速マニュアル・トランスミッションもそのまま採用されていた。
小型ハッチバックにも極太トルク
何より素晴らしいのは、多くのコンセプトカーとは異なり、完全に走行可能な状態だったことだ。AUTOCAR UK編集部は2008年4月、試乗のためにマイアミへ飛び、その最初の印象は上々だった。
R8 V12 TDIコンセプトは102kg-mという途方もないトルク(わずか1750rpmで発生!)を誇り、実に速かった。また、排出ガス規制に対応するためエンジンには多数のフィルターが搭載されており、排気音はほぼ完全に抑えられ、非常に洗練された走りを見せた。

試乗担当の記者は「このクルマは、世界がこれまでに見た中で最高の普段使い可能なスポーツカーになる可能性がある」と結論づけた。アウディも1年半後には生産開始できると自信を持っていた。
ディーゼル車の勢いはそこで止まらなかった。R8の直後、新進気鋭のSUV『Q7』の最上位モデルが同じV12ディーゼルエンジンを搭載し、R10 TDI由来の噴射システムとクランクシャフトを備えて量産化が決まった。
続いて登場したのが、あまり知られていない『A3 TDIクラブスポーツ』というコンセプトモデルだ。
2代目A3をベースにしたTDIクラブスポーツは、2.0L直列4気筒ディーゼルエンジンから224ps、45.9kg-mを発生し、ディーゼル・ホットハッチの先駆けとなった。大胆なボディエクステンションやカーボンセラミックブレーキを装備し、室内にはバケットシートとR8のゲート式マニュアル・トランスミッションが採用された。















