F-タイプRのAWDは、現在売られるF-タイプのなかで最も高価なモデルだ。ならば最も優れたモデルでもあるのだろうか?

■どんなクルマ?

まず第一にF-タイプRの発するエグゾースト・ノート。デビューから幾ばくかの月日が流れたが、高齢者を驚かせ、子どをたちを怯えあがらせる雄々しいサウンドに私はいまだに飽きずにいる。

そして第二に絶対的なスピード。299km/hという最高速度は、いかなる観点からみても常軌を逸したものであり、Rを特別なものにしていると思う。

問題は、そんなRのパフォーマンスをフルに引き出せる場所が無かった点だ。たとえば11月のじっとりとした峠道を走らせたときなど、ホットロッドをラリークロスのステージで走らせているような気持ちになった。

マイアミの夕暮れの浜辺を、オープンで走るくらいが、Rには似合っているのかもしれない。

しかし、今回のお相手である2016年モデルからは(あなたが望む望まないにかかわらず)これまでとは違ったものになっている。

なぜならF-タイプSとRには、オン・デマンドAWDという心強いオプションが追加されたからだ。エントリー・レベルのV6にさえ、トルク・ベクトリングが組み合わされるようになった。