知っているようで知らない『自動車オイル』の現実 日本で当たり前の『0W-20』が欧州ではまだ珍しい シェルの研究所で聞いた奥深さとは

公開 : 2026.09.16 17:05

1990年代までは量販店などで自動車オイルを吟味する方も多かったですが、最近は関心度が下がっている印象です。過去と現在についてシェル・ルブリカンツジャパン技術研究所でじっくりと話を聞いてきた、桃田健史がレポートします。

日本市場での需要が世界をリード

何と『0W-20』といった低粘度オイルは、日本市場での需要が世界をリードしているのか。知っているようで知らない、自動車オイルの現実。今回の勉強会に参加して、改めて自動車オイルの奥深さを実感した。

神奈川県の厚木エリアの北部に位置する『シェル・ルブリカンツジャパン技術研究所』(神奈川県愛甲郡愛川町中津)で、自動車オイルの過去と現在についてじっくり話を聞くことができた。

シェルの自動車オイルといえば、F1のフェラーリなどが頭に浮かぶかもしれない。今年も『貝殻マーク』を付け戦っている。写真はイタリアGPにて、シャルル・ルクレール選手。
シェルの自動車オイルといえば、F1のフェラーリなどが頭に浮かぶかもしれない。今年も『貝殻マーク』を付け戦っている。写真はイタリアGPにて、シャルル・ルクレール選手。    フェラーリ

同社の強みは、最適、高品質な原材料をシェル・グループとして世界規模で調達できる点にある。その上で、シェル・グループのノウハウを基に横浜と神戸にある潤滑油工場で製造し、全国に安定供給する独自のサプライチェーンを構築しているのが特徴だ。

さて、自動車オイルと聞いてユーザーはどのようなイメージを持っているだろうか。

1990年代頃までは、自動車部品等を扱う量販店で様々なブランドの様々なグレードを、ユーザー自身が吟味してからオイル交換を依頼したり、また自宅のガレージでオイル交換する人も珍しくなかった。

だが最近は、旧車や輸入車の一部で自動車オイル選びを気にする人はいるものの、1990年代頃までと比べるとユーザーは自動車オイルに対する関心度が下がっている印象がある。

ところが、日本はもとよりグローバルで自動車で使われる様々な潤滑油の需要は着実に増加しており、その中で市場のニーズに合わせた新商品の研究開発が進んでいるのだ。

市場トレンドの源泉は自動車メーカー

そもそも、自動車オイル開発のスタートポイントが何かを、ユーザーはほとんど気にしていないだろう。

シェルの自動車オイルといえば、F1のフェラーリや、ル・マン24時間レースを筆頭とするWEC(世界耐久選手権)に出場するBMWのハイパーカーなど、ハイエンドなモータースポーツで活用するスペシャルなオイル開発が頭に浮かぶかもしれない。

神奈川県愛甲郡愛川町にあるシェルの技術研究所。製造は横浜と神戸にある潤滑油工場で行う。
神奈川県愛甲郡愛川町にあるシェルの技術研究所。製造は横浜と神戸にある潤滑油工場で行う。    シェル・ルブリカンツジャパン

確かに、究極の使用環境における自動車オイル開発は、自動車オイルの基礎技術を向上するために必須だ。

だが、自動車オイル事業全体で見ると、市場に対して最も大きなインパクトが強いのは、自動車メーカー各社から開発依頼がある量産車向けの領域だ。

見方を変えると、自動車オイルは量産車における部品のひとつだといえる。自動車メーカーが新型車を導入する数年前に、自動車オイルメーカーに対して自動車オイル開発の依頼が来る。

例えば燃費に関しては、金属部品や電子部品と比べて、自動車オイルによる燃費向上のコストパフォーマンスが高いという試算がある。

要するに、量産車が生産工場からラインオフする際に使われている『新車充填オイル』は、そのクルマ(エンジン)に最適な自動車オイルが開発されているということだ。

そして正規ディーラーでの定期点検や車検では、自動車メーカーが指定するオイル、つまり専用開発されたオイルを使用するのが基本となる。

自動車オイルのトレンドは、量産車が主役だとも言えるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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