グリップを作り出す2大要素 『粘着摩擦』と『ヒステリシス摩擦』の違いを理解する【サイトウサトシのタイヤノハナシ 第24回】

公開 : 2026.09.16 12:05

タイヤの達人・サイトウサトシが、30年以上蓄積した知識やエピソードを惜しみなく披露するブログ。第24回はグリップを作り出す2大要素、『粘着摩擦(凝着摩擦)』と『ヒステリシス摩擦』についてです。

本が一冊書けるくらいのハナシ

少し前に『ゴムの技術と走る実験室としてのモータースポーツ』という、ブリヂストン主催のメディア向け勉強会をレポートしました。その中で、タイヤのグリップ力に関する話がありました。

ここで、『粘着摩擦(凝着摩擦)』と『ヒステリシス摩擦』というコトバが出てきました。

今回は、無謀にも本が一冊書けるくらいの内容です。
今回は、無謀にも本が一冊書けるくらいの内容です。    平井大介

これがほぼタイヤのグリップなのですが、説明しようとするととても難しい。ということで、ボクの勉強も兼ねて、タイヤのグリップ(摩擦)を作り出している2大要素、粘着摩擦とヒステリシス摩擦について、改めて学習をしてみたいと思います。

実はこれだけで本が一冊書けるくらいの内容なので、そもそもコラムで解説を試みること自体、無謀な試みなのですが……。ちなみに『粘着摩擦』と『凝着摩擦』は基本同じ意味です。ここでは感覚的にイメージしやすい粘着摩擦というコトバを使います。

さて、粘着摩擦とヒステリシス摩擦です。ボクがタイヤのレポートを書き始めた当初、最初に行き当たった壁が、このふたつの摩擦でした。

「え、タイヤのグリップって粘着摩擦だけじゃないの?」と思ったのですが、モノの本を読むと、確かに「そうじゃない」と書いてある。

粘着摩擦はわかりやすいけれど、ヒステリシス摩擦が、わからない。

いろいろ調べてみると、ドライ路面でタイヤがグリップするときに働く力として大きな割合を占めているのが、粘着摩擦。雨の日にタイヤがグリップするときに大きな割合を果たすのが、ヒステリシス摩擦なのだそう。

確かに、雨の日にタイヤが粘着するイメージは、少ないけれど……?

ゴムが変形して元に戻る時のエネルギーロス

そもそも、ヒステリシス摩擦って何? という疑問が浮かびます。簡単に言ってしまうと、ゴムが変形して元に戻る時のエネルギーロス(時間差)のことです。

タイヤが路面を転がっていく時、路面の小さな突起と、そこを乗り越えるタイヤのゴムを拡大鏡で観察するイメージです。

走っていれば、必ずタイヤのゴムは変形しますよね。
走っていれば、必ずタイヤのゴムは変形しますよね。    平井大介

もしもゴムが完全な弾性体(弾性率100%)であれば、路面の突起を乗り越えるときにゴムが押しつぶされるエネルギーと、突起を乗り越えた後の押し戻すエネルギーが同じになって、抵抗はゼロになります。

けれどもゴムは粘弾性体といって、変形した後にワンテンポ遅れて変形が戻る特性を持っています。

突起を乗り越えるときは素早く変形しますが、突起を乗り越え変形が元に戻るときには遅れが生じます。

変形の戻り遅れはゴムの発熱となって消費(ロス)されます。このエネルギーロスがヒステリシス摩擦の正体です。

『変形エネルギー>回復エネルギー』となり、タイヤが突起を越える前後での圧力差がタイヤの進行方向と逆向きの力=グリップ力になるのです。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    斎藤聡

    1961年生まれ。学生時代に自動車雑誌アルバイト漬けの毎日を過ごしたのち、自動車雑誌編集部を経てモータージャーナリストとして独立。クルマを操ることの面白さを知り、以来研鑽の日々。守備範囲はEVから1000馬力オーバーのチューニングカーまで。クルマを走らせるうちにタイヤの重要性を痛感。積極的にタイヤの試乗を行っている。その一方、某メーカー系ドライビングスクールインストラクターとしての経験は都合30年ほど。

サイトウサトシのタイヤノハナシの連載

連載をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

Google検索で『AUTOCAR JAPAN』の記事を見つけやすくする方法