女王を記念した新世代のフラッグシップ ヒルマン・ミンクス・カリフォルニアン(1) ツヤツヤ塗装に合成皮革の香り
公開 : 2026.10.04 17:45
戦後の英国で、クルマの楽しさを再提供したヒルマン・ミンクス・カリフォルニアン。ツートーンのモダンなボディに、戦前のサイドバルブ・エンジン。UK編集部が時代反映の1台を振り返ります。
再び楽しい乗り物になろうとしていたクルマ
1953年の英国人の暮らしは、テレビがそうだったように、モノクロからフルカラーへ変化していった。戦後の薄暗い空気感は徐々に晴れ、ゆっくり明るい未来が訪れようとしていた。「以前ほどは悪くない」と、思えるようになっていた。
確かに、第二次大戦の集結から8年が過ぎても、ビールは気が抜けて温かった。紅茶が日常へ溶け込んだ英国にあって、エスプレッソ・コーヒーは社会的な地位を模索していた。ポリオや結核といった病気は他人事でなく、日常生活に心配事はつきものだった。

とはいえ、社会的な秩序は保たれていた。恰幅の良い警察官は、しっかり悪人を捕まえた。若き新女王が誕生し、ノーベル文学賞を受賞したウィンストン・チャーチル氏が首相へ就任。ジェット旅客機での海外旅行を、夢見ることができた。
ガソリンの配給性は終了し、クルマは再び楽しい乗り物になろうとしていた。グレートブリテン島を走る約300万台の殆どは、自国で作られていた。そこへ加わったのが、今回ご紹介するヒルマン・ミンクス・フェイズVI カリフォルニアンだ。
ピラーレス・ハードトップのミンクス
これは、ミンクス・ドロップヘッドクーペ(カブリオレ)の、ハードトップクーペ版。1953年に発売され、センターピラーレスのルーフを持つ当時唯一の英国車だった。シャシーが一体のモノコック構造を得ていたミンクスだが、相当に大胆な設計といえた。
英国で探せた、同等に開放的なサイドウインドウを備えた欧州のモデルは、フィアット1900 グランルーチェ・クーペか、DKW ルクス・クーペくらいだろう。異論は認めるが。少なくとも、BMC傘下の各ブランドもフォードも、提供していなかった。

ヒルマンと同じルーツ・グループに属したサンビームは、1955年のレイピアでピラーレス・ハードトップを採用。ヒルマンは、1968年にファストバックのインプでカリフォルニアンという呼称を復活させるが、こちらにはセンターピラーが備わった。
戦前のサイドバルブ・エンジンにモダンな見た目
ミンクス最大の特徴は、極めて平凡なファミリーカーだったこと。初代の生産が始まったのは、戦前の1931年。1970年にヒルマン・ハンターの格下として、ニュー・ミンクスの生産が終わるまで、数世代に渡ってルーツ・グループの成功を支えている。
1945年からミンクス・フェイズIは提供されていたが、戦後の新モデルと呼べたのは1949年に登場したミンクス・フェイズIIIから。ただし、1185ccか1265ccの4気筒サイドバルブ・エンジンは、戦前の技術を引き継いでいた。

スーパーマーケットがまだ存在しなかった、きな臭い時代の残り香はあった。それでも、まったく新しいモダンなボディを得ていた。
ガソリンタンクは7ガロン(約31L)と小さく、性能的には1952年のオースチンA40とほぼ同じ。1953年に世代交代するフォード・アングリアより、車格的には上だった。























































































































































