エミッション・スキャンダル、更に拡大

公開 : 2015.11.25 22:55  更新 : 2017.06.01 01:41

燃費疑惑も浮上

11月上旬に最高800,000台のガソリンおよびディーゼル・モデルが排出CO2値について不正がある可能性があると認めた後も、フォルクスワーゲンには更なる危機が訪れた。それは燃費の不正だ。

フォルクスワーゲンはそのステートメントで、「燃料消費の値についても、あまりに低く報告されていた。」とコメント。その大部分はディーゼル・エンジン・モデルであるとしている。そして「すぐにも信頼できる調査機関に調査をお願いしているが、現時点では詳細な報告はできない。」としている。

また、スポークスマンは、その対象が小型のエンジンであることから、フォルクスワーゲン、アウディセアトスコダが影響を受けるという。とりわけ、1.4ℓの4気筒、3気筒と4気筒のブルーモーション・ディーゼルがその対象であるという。この問題に対処するため、フォルクスワーゲンは20億ユーロ(2,600億円)のコストを見込んでいるという。しかし、それ以前に関係各局の意見を聞く必要があるという。また、どのような保証をするかについてもまだ触れられてはいない。

フォルクスワーゲンのCEO、マティアス・ミュラーは「この問題が起こって以来、私はよりハードな説明がなされるように促進してきた。このプロセスはわれわれにとっては苦々しいことでもある。しかし、現在、ただひとつ信じられるのは真実のみである。そして、フォルクスワーゲンの組織の再編成も必要だ。経営陣は、現在のこの状況を残念に思うと同時に、完全なる説明をクリアにしたいという、強い意志を持ってあたっている。」とコメントした。また、この問題において、フォルクスワーゲンのいかなる車輌も、その安全性にはなんら影響しないと語った。

EA288エンジンの問題はクリアに

このエミッション・スキャンダルが発覚したのは、2.0ℓ4気筒のEA288エンジンが事の発端だ。ドイツの通信社、DPAは、このEA288のベースとなったEA189ユニットの、初期のEU5に対応したモデルについてフォルクスワーゲンのエンジニアによって詳細な調査を行っているという。

フォルクスワーゲンは、今回のステートメントの中で、EA288エンジンから不正なソフトウェアを取り除く作業は完了した、とし、これから生産されるEA288ユニットについては、法的な要求を満たし、環境基準に従ったものになっているとコメントしている。

容疑者は10名足らずか

最大で30人程度の人間が今回の不正に絡んでいたのではという初期の噂もあったが、ドイツの検察は10人足らずの容疑者を既に特定したようだ。ドイツはブランズウィックの検察のスポークスマン、クラウス・ジーヘは、容疑者となる人数を「2人以上10人以下」と通信社、AFPに語っている。

2/3はソフトウェア・アップデートで対応

フォルクスワーゲンは11,000,000台のクルマに、今回不正が発覚した装置がつけられたことを明らかにしている。そのうち2/3はソフトウェア・アップデートで対応できるが、3,600,000台にあたるフォルクスワーゲン、アウディ、スコダ、セアトに搭載されている1.6ℓのEA189ディーゼルについては、何らかのハードウェアの変更が必要になるかもしれないとしている。とりわけ、北米仕様については、尿素タンクの追加が必要とされるかもしれないし、ヨーロッパ仕様については新しいインジェクションが必要とされることになるだろう。

フォルクスワーゲンのCEO、マティアス・ミューラーは、来年末までにすべてのクルマが修繕されると明言し、「われわれの最も重要な仕事は、ユーザー、パートナー、投資家、そして一般の市民に対して失われた信頼を回復することにある。」とコメントしている。

「私を信じてください。確かに落ち着ける状況ではないが。」と言いつつ「技術的な問題を解決する方法は見えてきている。しかし、ビジネスとファイナンシャル的な結果はまだ予見することさえできない。」ともしている。

何故、このようなことが起きたのか

ドイツの自動車専門家は、今回のスキャンダルをこのように分析している。

「何故、今回、このような危険な無効化機能(ディフィート・デバイス)を搭載するに踏み切った最大の理由は、エンジニアに対する時間的な圧力であったと思う。現在の技術であれば、エミッション規制をクリアするだけのものは作れたはずだ。しかし、テストにパスしなければという時間的制約が、今回のような問題を引き起こしたといえる。また、無効化機能を搭載することで、ドライバビリティ、パフォーマンス、燃料消費率を上げることが容易に出来たというのも理由のひとつだろう。」

現在のテクノロジーでは、もう既に無効化機能は必要でなかったと思われる。しかし、継続して無効化機能を組み込んだのは何故だろうか。

「2つの可能性があると思われる。まずひとつは、クルマの電子装置の集積の中から、それだけを取り除くのが容易でなかったこと。そしてもうひとつは、インストールした責任者が、その責任を取らなければならなくなるからだ。」

残る問題は、誰がこの無効化機能を搭載することにサインをしたかだ。前CEOのマーティン・ウィンターコルンは一切の関与を否定している。

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