唯一のTWRチューニング リンクス・イベンター(2) 印象的にマイルドな385ps 正規モデルのように高い完成度

公開 : 2026.06.06 17:50

ジャガーXJ-Sがベースのシューティングブレーク、イベンター。レーシングチーム、TWRの手で385ps化された唯一の車両が存在します。リンクス元取締役の逸話とともに、UK編集部が魅力へ迫ります。

ジャガーの正規モデルのように高い完成度

トム・ウォーキンショー・レーシング(TWR)仕様のジャガーXJ-Sは、発注から1か月後に完成したが、愛犬を座らせる場所がないとオーナーのレイモンド・バートン氏は気付いた。そこで、1987年にリンクス社のワークショップへクルマは運ばれた。

1万1434ポンドと、ちょっとしたスポーツカーを購入できる費用が支払われ、シューティングブレークが完成したのは3か月後。ロンドンとグレートブリテン島北東部のヨークシャー州の間を、犬を乗せて夫婦で頻繁に往復したという。

リンクス・イベンター(1987年式/TWR仕様)
リンクス・イベンター(1987年式/TWR仕様)

それから時は過ぎ、2020年に現オーナーのイアンがオークションで発見する。「自分は完璧主義者なもので、ボディの小さなサビを落とし、再塗装することにしました。最終的には大々的なレストアへ至り、完成したのは数年前です」と説明する。

粗大ごみの処分や週末の買い物に活躍

果たしてリンクス・イベンターは、英国南部の小さなコーチビルダーが手掛けたクルマだとは信じがたい。ジャガーの正規モデルのように、完成度が高いからだ。

優雅にカーブを描くルーフラインは、ジャガーのマスコット、リービングキャットの背中のよう。ウインドウより下側は、XJ-Sのフォルムを活かしつつ、見事にワゴンボディが融合している。大きな予算を投じて、開発されたように見えてしまう。

リンクス・イベンター(1987年式/TWR仕様)
リンクス・イベンター(1987年式/TWR仕様)

リアシートには巧妙な機構が内蔵され、荷室の床面とフラットに倒せ、奥行き1.8m以上の巨大な空間を生み出せる。運転席からバックミラーを覗くと、リアウインドウが想像以上に遠くて面白い。スリムなサイドウインドウが、伸びやかな印象を強めている。

イアンは、霊柩車に見えるようにも思う、と口にするが、最近は粗大ごみの処分や週末の買い物に活躍しているそうだ。フランスへの旅行も計画中にある。

聴き応えを増すメカニカルな重奏

TWRのチューニングと聞くと、過剰なまでの大パワーを期待したくなるが、実際は一般道が似合うグランドツアラー。ステアリングホイールは軽く、サスペンションは柔軟にストロークし、スピードライン・ホイールを巻く16インチ・タイヤが凹凸を均す。

この車両は、足回りにアストン マーティンDB7用の部品が移植されており、その効果もあるだろう。ダッシュボードは、艶深いウォールナットで飾られている。

リンクス・イベンター(1987年式/TWR仕様)
リンクス・イベンター(1987年式/TWR仕様)

テールパイプから、6.1L V型12気筒エンジンのハミングが聞こえてくるが、イタリア製ユニットのようにシンフォニックではない。しかし、カムシャフトとバルブ、ピストンの動きが激しくなるに連れ、メカニカルな重奏は聴き応えを増していく。

パワーにまったく不足はない。フロントピラーの風切り音はやや大きいが、傑出の洗練性は明らか。内に秘めたワイルドな側面が、充足感を高める。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ライアン・スタンデン

    Ryan Standen

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

リンクス・イベンターの前後関係

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