日産デュアリスが欧州でトップ・クラスのシェアって知ってた? 大人気の理由、なぜ?

公開 : 2017.03.20 12:00  更新 : 2017.06.01 00:26

急浮上した次なる問題 何を作ればいい?

次なる問題は、コンビニ・フックを備えたアルメーラより確実に魅力的なクルマを企画することだった。ゴーンの流儀に従えば、漠然としたビジョンを示すだけでは許されず、顧客の要望を、十分な調査と分析を重ねて理解し、それを書面にすることが求められる。

その結果として判明したのは、アルメーラやフォーカス、そしてゴルフなどが覇を競うCセグメントが、ミニバンやSUVにシェアを切り崩されているという事実だった。

さらに調査を進めると、ユーザーの興味深い嗜好が見えてきた。ミニバンであっても、そこに必ずしも絶対的な実用性を求めているわけではない。SUVならばガッチリした冒険志向のルックスや車高の高さを好むものの、その手のクルマに付きものの大きさなどといった弊害には妥協しないのだ。

であれば、答えはおそらくそうした需要の中庸にある。現在の視点であれば容易にそう推測できるが、前例がなかった2000年代初頭には、それは調査結果から導き出した憶測程度の結論だった。そうして手探りで生み出されたのがキャシュカイ、すなわち日本でデュアリスと銘打って販売されたクロスオーバーSUVである。

「デュアリスは、ユーザーの感性や機能的なニーズを理論的に考察して導き出したものに特有の匂いのようなものがあります」と、商品プランナーのエティエンヌ・アンリは2005年に語っている。つまり、デュアリスが登場する2年前には、クロスオーバー向けのP32Lプラットフォームを用いた市販車を購入するであろうユーザーの存在は、机上の空論にすぎなかったのだ。

「2007年当時、デュアリスの投入はリスクそのものでした」とは、欧州日産を統括するポール・ウィルコックスの弁だ。

「それまで存在しなかったセグメントを定義するわけで、それがどのような反応を呼ぶかという確信もなかったのです。しかし信じられないことに、発売から今日まで、成功を続けています。多くの賞を獲得し、業界全体がこれに追随して、多くのメーカーがこのセグメントに競合するクロスオーバーを投入しているのです。お客様がデュアリスを愛して下さっているのは間違いありません。それは販売台数が証明しています。毎年25万台を販売しており、その需要が衰える気配すらみせないというのは、驚くべきことです」

日産の重役の見解はともかく、数字は嘘をつかない。2007年2月の発売以来、先代と現行世代を合わせて330万台以上のデュアリスが、137カ国で売れているのだ。

そのうちの230万台を占める欧州市場は、間違いなくこのクルマの主戦場であり、昨年だけで26万1429台がユーザーの元に嫁いでいる。


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