こんな自転車通行環境に誰がした 改正道路交通法に思うこと【森口将之の『もびり亭』にようこそ 第22回】

公開 : 2026.07.08 12:05

モビリティジャーナリストの森口将之が、モビリティに関するあらゆる話題を語るこのブログ。第22回は、4月に始まった改正道路交通法の施行による自転車通行についてです。

『普通自転車の通行の安全を確保』とは

4月になってから、車道を走る自転車が急に増えたと思っているのは、僕だけではないはずです。きっかけとなったのはやはり、改正道路交通法の施行に伴い、自転車への青切符が導入されたことでしょう。

これまでも日本には自転車のルールはありましたが、運転免許が不要であるうえに、曖昧だった部分もあったことで、モラルの低下が目立っていました。

車道を走る自転車が増えた、東京都内の道路。
車道を走る自転車が増えた、東京都内の道路。    森口将之

それが青切符というわかりやすい罰則が取り入れられたことで、多くの人がルールを守って走るようになったのかもしれませんが、僕はマスメディアの報道も関係していると思っています。

日本の報道に、不安を煽るような内容が多いとは感じないでしょうか。最近の日本人は、物事を悲観的に考えがちなので、そこにつけ込んだニュースが多く読まれる、つまりお金になるからではないかという背景は、専門家も指摘しています。

自転車ルールについては特に、歩道通行が多く取り上げられました。

自転車は車両のひとつなので、車道通行が基本です。ただし交通事故が激増した1970年代に、条件付きで歩道も走れることが決まりました。これらは現在の道路交通法にも記してあります。

歩道を通行できるのは、道路標識などにより普通自転車が歩道を通行できる場合、児童、幼児、70歳以上の高齢者など普通自転車での車道通行が危険な場合、普通自転車の通行の安全を確保するためやむを得ないと認められるとき、とあります。

ちなみに普通自転車とは、道路交通法施行規則で定められていて、長さ190cm以下、幅60cm以下、四輪以下、側車なしなどの内容です。自転車ショップの店頭に並んでいる自転車は普通自転車と考えていいでしょう。

警視庁が自転車ルールブックを公開

歩道通行の条件で気になるのは、最後の『安全を確保するため』です。

認められるかどうかを判断するのは警察だと読み取れますが、自転車に乗る人が危険だと訴えているのに、警察が一方的にそれを認めないのは、憲法にある基本的人権に関わりそうなので、穏便に済ませるのではないかと考えています。

自転車レーンとして認められない歩道上の自転車通行空間。
自転車レーンとして認められない歩道上の自転車通行空間。    森口将之

事実、青切符導入の半年ぐらい前には、警察庁が『自転車ルールブック』なるものを公開し、最初のほうで『普通自転車の歩道通行について』というページを設け、基本的に取締りの対象となることはないと明記しています。

このような項目をわざわざ用意したのは、同年4月の取締り対象発表で『通行区分違反(逆走、歩道通行等)』とあり、自転車での歩道通行が全面的に禁止となるという報道が出始めたことへの対応でしょう。

たしかにルールブックの公開で、それまであった歩道通行の報道は下火になりました。ところが青切符導入の直前になると、『自転車で歩道を走れなくなる?』と、『?』で逃げ道を作っておきつつ不安を煽る記事を多く見るようになりました。

それが車道を走る自転車が増えたことに関係していると、僕は考えています。

だからでしょう、警察庁では5月に、青切符導入後1ヵ月間の状況を発表。違反が多かったのは指定場所一時不停止、携帯電話使用、信号無視で、通行区分違反は項目すらありませんでした。

さすがにその後、歩道通行を取り上げた記事は減りましたが、一方でSNSなどで話題になったのは、追い越しのための右側部分はみ出し通行を禁止する『イエローライン』が引かれた狭い道路です。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。

森口将之の『もびり亭』にようこその連載

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