知ってた? ポルシェ964「フラットノーズ」 元オーナーは元首 試乗記

公開 : 2017.10.07 19:10

964フラットノーズ 実際に乗ってみると……

着座位置は比較的高く、ボディの隅々まで見渡すことができる。ダッシュボードや計器の配置も他のポルシェとそう変わらない。革張りのシートはとても快適で、体がむやみに挟まれるような感じはなく、ほどよく包み込まれる感覚だ。

低速では全く怖さを感じない。アクセルが敏感過ぎるということもない。他のクルマの経験をもとに言えば、ターボ車は、一般に4000rpmに近づくまでターボがあまり効かない。

一方このクルマでは、4000rpm付近に達した後も水平対向6気筒エンジンのレスポンスが瞬時であり出力特性がリニアなため、フィーリングは自然吸気エンジンに驚くほど近い。ターボエンジンであることを思い出させるのはタービン音のみ。音楽的とまでは言えないものの、特徴的な音色だと思う。

とてもよく走るクルマであり、加速はまるで弾道弾のよう(0-97km/h加速はおよそ4.7秒)。極めて扁平率の小さいタイヤを履いているにもかかわらず、乗り心地も悪くない。速度規制用のバンプを楽に越えていくことさえできる。

ギアチェンジをする際に手元に伝わる感触は少し硬く、カチリとした手応えである。これは他のポルシェも同じ。その一方で、ステアリングは軽いが、かえってこれが気持ちよい。大渋滞でもそれほど不安を感じることはない。クラッチは、徐行しても膝腱に負担がかかるほど重くなく、変な音もしない。「針が跳ね上がる」のを恐れ、計器の針を常時見張る必要もない。

唯一の弱点は、目の飛び出る価格だ。しかし新車購入時以来、966kmしか走行しておらず、これほど新車同様の964フラッハバウを目にすることは、後にも先にもないだろう。

ちょっとした「スペシャル」シリーズは、たいていそれなりに魅力的なものの、その価値は永続しないことが少なからずある。けれど、特にこの964フラッハバウは、オーダーメイドの分だけ魅力が増している。

フラットノーズを備えた極めて希少なポルシェ。誰が夢中にならずにいられようか。

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