ジェンソン・バトン レースの虜となった数奇な人生 インタビュー

公開 : 2018.08.12 16:10

番外編 バトンのロードカー・コレクション

ジェンソン・バトンは、わたしの自己紹介をうけて「AUTOCAR? もちろん知ってるよ」と笑った、根っからの熱狂的なロードカーマニアだ。子どもの頃は部屋にポスターを3枚貼っていたという。パメラ・アンダーソン、バート・シンプソン、そしてフェラーリF40だ。

彼は自分で稼げるようになると、速いクルマを買いはじめる。「ウィリアムズと契約した年に、フェラーリの店へ行ってF355を買ったんだ。年齢が保険の対象外だからといって試乗は断られたけど、助手席に乗ってセールスマンに運転してもらったんだ。いまでも持ってるし、手ばなす気はないよ。でも、隣にあったF40を買っておけばよかったかなと今でも思うね。F355よりムチャクチャ高いわけでもなかったし、投資で買うにははるかに良かっただろうね」

それ以降も、ブガッティ・ヴェイロンやフェラーリ・エンツォそしてポルシェの限定車など、いかにもレーサーが欲しがりそうなクルマを次から次へと購入した。「正直にいうと、投資のために買って乗らずにおいておくクルマもあることはあるよ。だいたいはクルマに込められた思いが気に入ったから買うんだけど、経験上はあまりそういうクルマが運転して楽しいわけでもないみたいだね」

ヴェイロンが手元にあったのはわずか数カ月だったという。「ヴェイロンに乗ってケンジントンで信号待ちをしてたんだ。われながらイケてると思ってたんだけど、信号が青になって1速に入れたとたんにギアボックスが壊れたんだ。みんなが見てる前で外に出てクルマを押して脇へどける羽目になったよ。交通整理の警官も、自分の仕事じゃないといって手伝ってもくれなかった。おまけに、タイヤを換えるだけでも5000ポンド(73万円)もかかるクルマだよ? それを知ったらぜんぜん楽しむ気もなくなったよ」

ロサンゼルスへ移住してからの話だが、とあるオークションへ行ったバトンは、カーキチの物欲が炸裂。1台どころか3台も買って帰ってきた。トランザム、シェビーのピックアップ、そしてコルベットの507psエンジンを突っこんだシェビー・ベル・エアだ。「めったに乗らないけど、それでもいいんだ」と彼はいう。「高かろうが安かろうが、好きなクルマはたくさんある。でも値段じゃないんだ。持ってるだけで楽しいんだよ」

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