ダットサンや石油危機が消した灯火 MGB GT V8(1) ミニ1台分の価格差 V8化で成功したコステロ

公開 : 2026.04.26 17:45

英国の自動車産業が苦境だった1970年代に、貴重な灯火になったV8エンジンのMGB GT。そのキッカケを生んだ、1人のドライバーによるV8化ビジネス。2台の魅力を、UK編集部が確かめます。

貴重な灯火だったV8エンジンのMGB GT

英国の自動車産業が苦境に立たされていた1970年代、MGB GT V8は貴重な灯火といえた。しかし多くの要因が複雑に絡み、成功といえる結果は残せなかった。

技術的な詰めの悪さが、その理由の1つになった。急激なポンドのインフレと、V型8気筒エンジンへの関心を奪ったオイルショックが、追い打ちをかけた。そもそもエンジンの供給が充分ではなかった、という説も存在するが。

ブルー・グリーンの量産版MGB GT V8と、レッドのMGB GT V8 コステロ
ブルー・グリーンの量産版MGB GT V8と、レッドのMGB GT V8 コステロ    マックス・エドレストン(Max Edleston)

直列4気筒が標準だったMGB GTを強化し、200km/h以上の動力性能を持つグランドツーリング・クーペを作るというアイデアは、今も昔も英国人の支持を集めそうに思える。しかし、2591台しか作られなかったことに衝撃を受けてしまう。

その内の1862台は、見た目が美しいクロームメッキ・バンパー。安全性を高めたラバー・バンパー仕様は、1974年末から提供された。だが、親会社を共にしたローバーが発売したSD1と交代するように、1976年末に生産は終了している。

対峙したダットサン240Zやフォード・カプリ

改めて、MGB GT V8は実に魅力的な英国車だ。全長3.9m足らずの2+2ボディに、壊れにくく軽量な3.5L V8エンジンが載っているのだから。スタイリングは新車時でも新鮮味は薄れていたが、当時の欧州製ライバルに劣らないほど端正だった。

しかし、世界は変化してもいた。洗練度が高く、実用的な選択肢が存在した。ダットサン240Z(日産フェアレディZ)や、フォード・カプリなどが、その筆頭だった。

MGB GT V8(1973〜1976年/英国仕様)
MGB GT V8(1973〜1976年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

MGB GT V8は、パワフルなMGというコンセプトで、ラインナップに新風を巻き起こすはずだった。20万ポンドと開発予算は限られていたが、1972年に公道でのテストを開始。発売は、予定より遅れたものの、1973年8月に始まった。

試乗した当時の自動車雑誌は、低速域で硬い乗り心地や、高速域での風切り音を指摘した。アンダーステアが酷かったMGCより操縦性は遥かに優れ、動力性能も高かったが、ナイロン製の内装が評価を高めることはなかった。

新車のオースチン・ミニを購入できた価格差

コンバーチブルが設定されないことに、不満を漏らす人もいた。MGの技術者は、ボディ剛性の確保が難しいことを理由にした。同時に、社内の政治的な縛りもあっただろう。

ブリティッシュ・レイランド(BL)傘下のトライアンフは、スポーツカーに強いブランドとして贔屓されていた。好調に売れていたドロップヘッドクーペ、TR6の対抗馬となるようなモデルを、同門から新たに提供する必要性が低いことは、充分理解できる。

MGB GT V8(1973〜1976年/英国仕様)
MGB GT V8(1973〜1976年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

他方、V8エンジンを積んだクーペ、トライアンフ・スタッグの販売は、北米で苦戦していた。それを受け、GT V8の輸出には消極的だったようでもある。実際、生産された左ハンドル車は極めて少ない。

英国では、4気筒のMGB GTより620ポンドも高く、営業マンは販売に苦戦した。その金額で、新車のオースチン・ミニを購入できたのだから。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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