英国バックヤードビルダー訪問記 RAW編

2019.09.29

サマリー

最後にご紹介するのは正確に言えばウスターシャーではなく、ヘレフォードシャーに拠点を置くRawです。マーティンとジェレミーのふたりのエンスージァストが手掛ける年産わずか10台のマシンは、英国バックヤードビルダーの能力を示す見事な一例です。

もくじ

マーティン・ジョーンズ&ジェレミー・バルマー
年産10台 オーダーメイドにも対応
バックヤードビルダー 素晴らしい一例
番外編:リエージュの伝説

マーティン・ジョーンズ&ジェレミー・バルマー

ふたたび農場へと戻ってきたが、Rawのガレージは単なるだだっ広い納屋というよりも、明確な目的を持って建てられた建物のようであり、巨大なスライド式ドアと4柱リフトを何台か備え、ここで作り出される車両のための広大な保管スペースまで確保している。

ここで生産されているのは、主にケーターハム・セブンのようなルックスをしたストライカーという名のレース用マシンであり、完成車としてもキットモデルとしても購入することができる。さらに、力強いボディを纏ったフェニックスというモデルもあるが、詳細については後程ご紹介させて頂こう。

マーティンとジョーンズ
マーティンとジョーンズ

まず告白させてほしい。Rawのガレージがあるのはキャノン・ピョン村であり、ここはウスターシャーではなくヘレフォードシャーだ。それでも、決してヘレフォードシャーの奥深くというわけではなく、実際、わたしが訪れた日も、ジェレミーとマーティンのモーガンで働く共通の友人が特に用事もないのに立ち寄っていた。つまりはそれほどウスターシャーに近いということだ。

年産10台 オーダーメイドにも対応

ジェレミーはシードル造りが家業の一家に生まれているが、彼と彼の兄弟であるカラムは、ヘレフォードシャーのオーナーから2010年にRawを買い取っている。もともとはジェレミーが所有するロータス・セブンのパーツを購入するためRawを訪れたのがきっかけであり、その後、ストライカーとさらに続いてフェニックスの権利まで、彼の買い物カゴに納まることになったのだ。

もともとRawはリンカーンシャーで設立されており、最初のストライカーが誕生したのは1986年のことだった。いまでは約1000台のストライカーが公道やサーキットで活躍しているという。

RAWストライカー
RAWストライカー

ジェレミーとマーティンのふたりで年間10台ほどの車両生産を行っており、車両の組み立てを行っていない時間は、顧客車両の準備やメンテナンスに費やされている。ガレージのスペースを空けておくため、シャシーとボディの製作は地元サプライヤーに委託しており、そのお陰でふたりは完全なオーダーメイドへの対応や、シャシーとエンジンの新たな組み合わせの検討といった作業を行うことが出来るようになったという。

バックヤードビルダー 素晴らしい一例

「周囲には高い技術を誇る組立メーカーや加工メーカーが数多くあります」と、マーティンは言う。「一方、エンジンとエンジンマネジメントシステムはチェルトナムにあるオメックス・テクノロジー製です」

スタンダードモデルが2.0LのフォードZetecエンジンを積むストライカーの車重はわずか530kgに留まっており、完成車が2万1244ポンド(276万円)のプライスタグを掲げる一方で、組立キットであれば1万7494ポンド(227万円)から手に入れることができるが、どちらの場合もシングル・ビークル認証が必要だ。

RAWフェニックス その3
RAWフェニックス その3

素晴らしいモデルだが、個人的に運転してみたいと思ったのは、ストライカーをベースに、325psを発揮するスーパーチャージャー付Zetecエンジンを積んだ、ロードスターモデルのフェニックスの方だった。

ペンブルトンと同じく、このクルマのドライバーズシートに納まるには、まずはサイドシルを跨ぐ必要がある(mm単位の組立精度が求められるような事態を避けるため、このクルマにドアは存在しない)が、シートベルトを締め、エンジンに火を入れると、フェニックスは農場の外にも響き渡るような咆哮をあげながら、路上へと飛び出していく。

アクセルを思い切り踏み込む必要があるものの、一旦目を覚ましたフェニックスはすさまじい勢いで前進を続け、素早いシフトアップを求めて来る。ステアリングは驚くほどクイックでダイレクトだが、乗り心地は容赦ない。

このクルマはサーキット用であり、公道向きではないが、素晴らしいマシンであり、バックヤードにあるガレージでふたりの男が創り出すモデルとしては素晴らしい一例だと言えるだろう。

 

人気記事