BMW 435i スポーツ

公開 : 2013.07.24 18:30　　更新 : 2017.05.29 18:00

■どんなクルマ？

BMW 435iは、来年デビューするM4に最も近いモデルだ。現在、ラウンチ・ラインナップにはこの435iと428i、420iの3モデルが用意されているが、そのうち唯一の6気筒エンジン・モデルでもある。

そのパワーは302bhp/5800-6000rpmだが、それよりも40.8kg-mというトルクを1200rpmから5000rpmという広範囲にわたって引き出されるのが魅力である。トランスミッションは8速のオートマティックで、0-100km/hが5.1秒、トップスピードはリミッターで制限される250km/hというパフォーマンスを誇る。この0-100km/hのタイムは、6速マニュアルよりも0.3秒速いが、435i xDriveよりは0.2秒遅いタイムだ。

4シリーズは、3シリーズに較べて50mm長いホイールベースを持つ。また、ボディ・サイズは26mm長く、トレッドもフロントが45mm、リアが81mm拡大されている。ルーフラインは16mm低く、ドライブ・ライドは10mm低い。これは、現行のBMWで最も低い重心となる。

シャシー・セッティングに関しては、BMWはダンパーとキャンパー・アングルを変更して、フロント部分を強化している。また、その強度は旧い3シリーズよりも60%ほど固くなったという。

もちろん旧3シリーズ・クーペの後継モデルではあるが、BMWは4シリーズを3シリーズから遠ざけようとしているように思える。スタイリングはぐっとハンサムになっている。特に、広いリア・ホイールアーチの持つハイポイント・デザインは、中型クーペでは初の採用となる。

内部も3シリーズと同じようなデザインをとるが、ダッシュボード・カラーパレットなどはサルーン・モデルでは選択的ないし、ドア・カードやリアのコンパートメント・ラインなどは3シリーズからの脱却を目指しているように感じられる。

リア・シートは2つの独立したもので、6シリーズのようなヘッドレストが取り付けられる。そのキャビン・スペースはフロントはヘッド・クリアランスは減ったものの充分なもので、リア・スペースも13mmほど広くなっている。

■どんな感じ？

ドライブ・フィーリングは3シリーズと非常に酷似している。AUTOCARで5つ星の評価をとった現行の3シリーズと同じレベルの高い安定性と繊細さをもっている。

3.0ℓエンジンはツインスクロール・ターボで過給されることになるが、E92型のマニュアル・ギアボックス付きのM3クーペよりは0-100km/h加速で0.3秒ほど遅い。

ターボ・ラグについては一切考えにいれることはない。そのピーク・トルクは1200rpmから5000rpmと非常に広い範囲で発生する。その直線的なパワーは印象的だ。

しかし、エンジン・ノートについてはあまり印象的ではない。ディーゼルのようなアイドリング音で、回転があがるにつれても感動的なサウンドは奏でることはない。

しかし、エンジン自体のパワー特性は、円滑なデリバリーと、抜群のフレキシビリティを備える。その力は破壊的ですらある。その破壊的な力は8速のオートマティック・ギアボックスでリア・ホイールに伝えられるが、そのギアボックスはそのパワーを本当に上手くこなしているといった感じ。スポーツ・モードであっても唐突なシフトショックなど感じない。

われわれのテスト・モデルにはMスポーツ・モデルで標準となる可変サスペンションとステアリングが装備されていた。435iスポーツにはオプションとなる装備だ。モードをどちらにしていても、ステアリングは低速時にはやや軽い気がしたが、全体的にやや重めではあるが、正確さは首尾一貫している。

その捻れ剛性が改善されたかどうかについては、今回のテストでは不明だった。これを証明するためにはもう少し走りこまなくてはならないだろう。しかし、435iが最高のミッドサイズのクーペであることは間違いなく確認できた。アンダーステアも僅かで、ESPはオーバーステアを上手く消してくれる。また、スポーツ・プラス・セッティングでは電子制御のリア・ディファレンシャルが、コントローラブルなリアを提供してくれた。

■「買い」か？

もちろん買いだ。435iは例外的に有能なマシンとも言える。そして、価格がE92 M3の£54,980(842万円)よりもはるかに安い£40,795(624万円)ということを考えると、なおさら魅力的に感じる。

BMWが残した問題があるとすれば、3シリーズではなく4シリーズというネーミングを与えたことだ。その新しいネーミングを正当化するだけの理由が見当たらないのである。それでも435iは、スポーツ・クーペを愉しむためのアピールが随所に仕込まれたクルマであることは間違いない事実だ。

(スチュワート・ミルネ)