新型イプシロンもちゃんとランチアであった話【日本版編集長コラム#59】

公開 : 2025.12.07 12:25

AUTOCAR JAPAN編集長ヒライによる、『日本版編集長コラム』です。最近乗ったクルマの話、取材を通じて思ったことなどを、わりとストレートに語ります。第59回は新型『ランチア・イプシロン』に1週間ほど乗った話です。

ランチア120周年へのプロローグ

去る11月27日、ランチアは119周年を迎えた。当日はイタリア・トリノからちゃんとプレスリリースが発せられ、その歴史が改めて語られている。興味深い内容なので、機会があればじっくりとご紹介したい。

恐らくこれは、ランチア120周年へのプロローグだ。その目玉は2026年にデビューを予定し、既にティザーが始まっている『ガンマ』。果たしてどんなモデルになるか、ますます楽しみになってきた。

取材車となるランチア・イプシロンのハイブリッド。カーボックス横浜が直輸入した個体だ。
取材車となるランチア・イプシロンのハイブリッド。カーボックス横浜が直輸入した個体だ。    平井大介

さて、ガンマが登場するまでランチア唯一のモデルとなる『イプシロン』と1週間ほど共にする機会を頂いた。こちらはカーボックス横浜が直輸入した車両で、既に何度か記事化もしてきたので、ご覧になった方もいらっしゃるかと思う。

簡単におさらいをしておくと、イプシロンのグレードは標準モデルとハイスペックモデルの『HF』をラインナップし、パワートレインはそれぞれにBEVとハイブリッドを用意する。取材車は標準モデルのハイブリッドで、110ps(発表時は100psで後に向上)の1.2L直列3気筒ターボとモーターを組み合わせたもの。トランスミッションは6速DCTとなる。

また、取材車は初期に用意された『エディツィオーネ・リミタータ・カッシーナ』と呼ばれる限定車で、これはイタリアの高級家具ブランド『カッシーナ』とコラボレーションしたモデルだ。

大きすぎず小さすぎない

ボディサイズは全長4.08m、全幅1.76m、全高1.44m。プラットフォームはステランティス内で共有し、プジョー208オペルコルサと同じスペイン・サラゴサの工場で生産されている。

これはちょっと意外だった。てっきりフィアット600、アルファ・ロメオジュニアなどと一緒にポーランド・ティヒの工場で生産されると思っていたからだ。ちなみにティヒは先代のイプシロン、フィアット500アバルト595&695を生産していたことで知られる。

乗ってみて最初に感じたのは、『しっくりくる』というものだった。
乗ってみて最初に感じたのは、『しっくりくる』というものだった。    平井大介

事実、比べてみると、イプシロンは全高が600の1595mm、ジュニアの1585mmよりも低いこともあって、コンパクトなクルマに感じる。機械式駐車場には問題なく収まるし、筆者の自宅がある静岡県東部の道が広くない地域でも、大きすぎず小さすぎないちょうどいいサイズ感だった。

今回改めて乗ってみて最初に感じたのは、『しっくりくる』というもの。個人的にイタリア車の左ハンドル+マニュアルしか購入したことがなく、取材車はマニュアルでこそないが、ドライバーとクルマの距離感がこれまでの愛車たちと近かったのだ。

イプシロンの本領を発揮したのは、試乗初日に酷い事故渋滞にあった時だった。普通に走れば2時間かからないところを3時間越えというなかなか厳しい状況で、疲れをそれほど感じさせなかったのには驚いた。

これは恐らくモケットのような素材を使用したシートが絶品だからで、別日に1日で500km近く走ることもあったのだが、これまた難なくこなすことができた。パワートレインも、街中ではせっかちなイタリア人が困らない程度の十分な速さがあり、高速でも1.2Lとは思えぬほどパワーに余裕があったりと実にオールマイティ。

回生ブレーキの効き方もちょうどよく、ワインディングの下りを流して走った際、足踏みブレーキをほとんど使わなかった場面があった。ステアリングフィールも好印象だ。

また、足まわりがよく動くのが実にランチアっぽいと感じた。伝統的にしっかりストロークさせるクルマが多いのがランチアで、このイプシロンもその延長にあると思えた。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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