20周年を迎えたアストン マーティン・ヴァンテージの現在地【日本版編集長コラム#60】

公開 : 2025.12.14 12:05

AUTOCAR JAPAN編集長ヒライによる、『日本版編集長コラム』です。最近乗ったクルマの話、取材を通じて思ったことなどを、わりとストレートに語ります。第60回は今年で20周年を迎えたアストン マーティン・ヴァンテージの話です。

ゲイドン産の現代的なヴァンテージ

自分の名前を冠しているコラムなので思い切り好き嫌いの話をすると、『アストン マーティン・ヴァンテージ』は好きなスポーツカーだ。現在発売されているモデルは、2005年に登場した『V8ヴァンテージ』を初代と数えるならば、2代目のビッグマイナーチェンジモデルとなり、今年でちょうど20周年となる。

もちろん、往年のヴァンテージについても理解はしており、正確には2代目でなく4代目と呼ぶべきかもしれない。しかし本稿の主役となる『ヴァンテージ・ロードスター』のプレスリリースの中で、派生ではなく独自のモデルとしてゲイドンで製造される現代的なアストン マーティンとして20周年であると書かれているので、ここでは2代目として書き進めたい。

独自モデルとして20周年となるアストン マーティン・ヴァンテージ。取材車はそのロードスター。
独自モデルとして20周年となるアストン マーティン・ヴァンテージ。取材車はそのロードスター。    平井大介

さて、『アストン マーティンとは?』と問われた時にイメージするのは、英国らしいGTスポーツカーの歴史だ。ひと言で表すなら、『ジェームズ・ボンドがスーツで乗りこなすスポーツカー』。そのイメージを代表するのが『DB5』であり、個人的にはリアルタイムで取材できた、最後のニューポートパグネル産となった『V12ヴァンキッシュ』の思い出が深い。

だから、『ベイビー・アストン マーティン』と呼ばれ、ポルシェ911をターゲットとした初代ヴァンテージについて、デビュー時は多少の違和感があった。しかし徐々に洗練されていく流れの中で、GTというよりはピュアスポーツカーとして別の魅力を放ってきた印象だ。

個人的にイメージするアストン マーティンらしい姿

そんなピュアスポーツカーの印象は2代目まで続いてきたが、ビッグマイナーチェンジにて155psものパワーアップを受け665psとなったことで、現行モデルはかなり違うものとなった。それは個人的にイメージするアストン マーティンらしい姿への変貌だ。

かなり乱暴な書き方をすると、4LのV8ツインターボのパワーアップを受け止めるべくタイヤサイズも大幅にアップし、強引に安定させたように見える。

メルセデスAMG製のV8ツインターボは、実に155psアップの665psとなった。
メルセデスAMG製のV8ツインターボは、実に155psアップの665psとなった。    平井大介

これはクーペを紹介する際にも触れたが、2代目デビュー当時にUK編集部が行ったロードテスト取材車はフロント255/40ZR20、リア295/35ZR20であったのに対し、新型はフロント275/35/ZR21、リア325/30/ZR21となっているのだ。

そのサイズ拡大はリアビューの印象にもそのまま表れており、かなりのワイドさで迫力がある。全幅は実に1980mmだ。個人的には現行ヴァンテージにおけるハイライトだと思う。

クーペ取材時は街中で少し乗れた程度だったので、今回、都内から静岡県東部の自宅まで往復する途中で箱根のワインディングを走る予定だった。しかし東名高速道路の下りで激しい事故渋滞にはまり、残念ながらその時間がなくなってしまった。

というのも、クーペの試乗記を担当した吉田拓生さんもUK編集部もそのドライバビリティを褒めており、ロードスターのUK編集部評も悪くない。だから、その良さを味わいたいと思ったのだが、結論から書くと味わえるシーンには出会えなかった。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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