欧州版「軽自動車」規格 新『M1E』カテゴリー導入決定 全長4.2m以下の小型EVに優遇措置

公開 : 2025.12.18 07:25

欧州委員会は、小型EVの新カテゴリー『M1E』の計画を具体化しました。ルノー5やフォルクスワーゲンIDポロのようなモデルのEU域内生産を促進するため、優遇措置を導入します。低価格化が焦点となります。

ルノー5など「欧州製」小型EVの販売促進へ

欧州連合(EU)は、欧州製小型EVの新たなカテゴリーに関する計画を固めた。排出ガス規制に対する「クレジット」を独自に設定することで、メーカーによる生産を促進する方針だ。

EUの立法機関である欧州委員会は、メーカーと協力し、日本の軽自動車規格を参考にした新しい車両カテゴリーの創設を目指してきた。そして今回、2035年のエンジン車の販売禁止を延期するという政策パッケージの一環として、その詳細を明らかにした。

『M1E』はルノー5(写真)など小型EVの欧州生産と低価格化に焦点を当てている。
『M1E』はルノー5(写真)など小型EVの欧州生産と低価格化に焦点を当てている。

新カテゴリーは小型EV専用で、M1乗用車クラスのサブカテゴリーとして『M1E』と命名される。車両全長は4.2m以下とされ、日本の軽自動車の3.4m以下という規定より大幅に大きい。

具体的な車種としては、ルノー4(全長4.1m)やルノー5(全長3.9m)、フォルクスワーゲン・グループが今後投入予定の小型EV(例:IDポロ=全長4.1m)などがこのカテゴリーに該当する可能性がある。

M1Eカテゴリーの詳細については、「EU規則2018/858」の改正案の公表とともに明らかにされる予定だ。ただし、欧州委員会はカテゴリーの要件を10年間不変とする方針を示している。策定は欧州委員会が行うが、欧州議会の承認が必要となる。

特筆すべきは、EU域内で生産されたM1E車両が、各メーカーのCO2目標達成に対する「スーパークレジット」の対象となる点だ。EU製M1E車両の販売1台あたり、従来1クレジットだったものが1.3クレジットを獲得できるため、メーカーにとっては大きなモチベーションとなるだろう。

欧州委員会は、このスーパークレジット制度について「M1E車両の低価格化にも間接的な好影響をもたらすと予想される」と期待感を示した。

また、小型EVの定義を確立することで、EU加盟国が補助金や税制優遇といった財政的インセンティブと、ボディサイズに基づく駐車料金や優先レーン利用権といった非財政的インセンティブの両方を設定しやすくなると示唆した。

英国はEUを離脱しているため、M1Eカテゴリーの直接的な影響は受けない。しかし、英国は自動車関連の規制をEUに準拠させており、地理的にも密接な関係にあることから、新規則に適合した車両が英国でも販売される可能性は高い。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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