【空冷エンジンの現役トリオ】ホンダN360 VWビートル シトロエン・アミ 前編

公開 : 2020.10.03 07:20  更新 : 2021.03.05 21:42

彼のカーコレクションでは、馬力は大きな意味を持ちません。共通するテーマは、コンパクトな空冷エンジン・モデルだということ。いまも日常的に乗っているという、ホンダとVW、シトロエンの個性派トリオをご紹介しましょう。

小さな空冷エンジンという共通点

text:Martin Buckley(マーティン・バックリー)
photo:James Mann(ジェームズ・マン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
空冷エンジンを愛する男、ティム・ジャーマン。イメージするような、クラシックカー・ファンとはだいぶ異なる。

ガレージと庭が修復途中のクラシックカーで埋まるほど手を広げたものの、計画性はなかったらしい。すべてを仕上げるための、資金や技術はなかった。

ホンダN360/シトロエン・アミ8 ブレーク/フォルクスワーゲン・ビートル
ホンダN360/シトロエン・アミ8 ブレーク/フォルクスワーゲンビートル

一方でジャーマンは、テーマ性を大事にしてきた。小さな空冷エンジン、というこだわりだ。4気筒以上のエンジンを持つモデルは、華やかすぎて気が引けるそうだ。

貿易の仕事を通じて、電気的な知識が豊富なジャーマン。時代遅れのテクノロジーにも、自然と接することができる。合理的な彼は、自身の手で済ませられることは、人に頼んでお金を支払うことはない。

1つのブランドに対する、忠誠心もない。コレクションの3台の実動車を見ると、共通点は小さな空冷エンジンだけ。生産国すら違う。

排気量は360ccから1200ccまで幅広い。最高出力は、最も強いモデルでも34ps。最高速度は、117km/h。質素なトリオは、それぞれ異なる国で誕生した。大人4人を載せられる、安価な交通手段として。

「小型の空冷モデルが好きなんです。ラジエターや冷却系統の腐食、ウオーターポンプやホースなど、心配のタネが少なくて済みます。スタイリングも個性的で興味深い」。ジャーマンが自らを分析する。

最近コレクションに加わったホンダN360

彼は1959年式のフォルクスワーゲン・ビートルを、13年間所有している。「最初は英国の老舗フォルクスワーゲン・ディーラーから、1959年に購入しました。4年間所有し、1963年に、一度親戚へ売っています」

「昔の整備記録などを読み返してみると、34万9000kmは走っているようです。(マイル表示の)オドメーターは3周目ですね」

ホンダN360(欧州仕様/1967〜1970年)
ホンダN360(欧州仕様/1967〜1970年)

「エンジンはオリジナルのままで、レストアはしていません。公道で走れるように直しました。エンジンは昨年リビルドし、クランクは当時物の新品です」

ビートルは、最近盗難されやすい。「クルマが狙われることが多く、気軽に停めておけません。部品はネット売買を通じて高値で売れます。職場の駐車場は安全なので、通勤に利用しています」

左ハンドル車のシトロエン・アミ 8ブレークは、夏の間、ジャーマンのファミリーカーとして活躍する。フォルクスワーゲン・ゴルフ4のかわりに。7年ほど乗っているという。

「前の所有者はフランスから英国へ持ち込んだ後、外に放置していました。直すつもりはあったそうですが、作業は得意ではなかったようです」

そしてもう1台。グリーンのホンダN360は、昨年イタリアから輸入した。ジャーマンのコレクションとしては最新で、彼の中では一番熱い存在だ。

「コレクションのテーマを拡張するモデルとして、以前から欲しいと思っていました。この3台は、2台分のスペースに停められます。もしガレージに詰めて並べれば、フィアット500も入るかもしれませんね」

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