【英国中古車市場のユニコーン?】中古車販売会社Cazoo オンライン取引に特化 しかし課題も

公開 : 2021.03.24 18:05

英国で注目を集めるユニコーン企業のCazoo社。オンラインで中古車を販売する同社には、大きな課題も。

創業者兼CEOに注目が集まる

text:Jim Holder(ジム・ホルダー)
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)

2018年に設立され、50億ポンド(約7500億円)という驚異的な評価額で株式市場上場を準備していると噂されるCazoo社。英国に拠点を置くこの新興企業は中古車販売を手掛けているが、なぜこれほどまでに高く評価されているのだろうか。

また、本当にそれだけの価値はあるのだろうか。破壊的なユニコーン企業か、あるいはユニコーンの格好をしたロバなのか。多額のマーケティング予算によって作り出された広告も影響しているはずだが、創業者の評判によるところも大きい。

納車は陸送ではなく、専用のトラックで自宅前まで運搬される。
納車は陸送ではなく、専用のトラックで自宅前まで運搬される。    Cazoo

その創業者とは、投資家であり、LoveFilm(Amazonに2億ポンドで売却された映画レンタルサービス)やZoopla(上場して22億ポンドで売却された不動産サービス会社)の生みの親であるアレックス・チェスターマンだ。

多くの投資家は彼に魅了され、Cazooに約4億5000万ポンド(約680億円)を投じて、中古車販売店の基礎的な部分から、知名度を高める広告キャンペーン、イングランドサッカーリーグのスポンサーシップまで、あらゆる資金を提供している。

Cazooの魅力は、オンラインのみで中古車を販売し、購入者の自宅までクルマを届け、お気に召さなければ返金保証まで行うという点だ。人の目を気にせずにクルマを買いたいという人には、とても魅力的なサービスであり、既存の実店舗運営に内在する障壁をテクノロジーを使って取り除いてきたチェスターマンの評判にもつながるものだ。

サービスが陳腐化する一面も

しかし、Cazooのビジネスモデルには課題がないわけではない。パンデミックにより、ほとんどすべての自動車小売業者がほぼ同様のサービスに移行したことや、消費者法により返金保証が革新的というよりは義務的なものになっていることなどが挙げられる。

さらに、高額商品を購入する人は実物を確認したいと考えることが多いという結論に達し、実店舗を持たずに中古車を販売するという最大の特徴を早々に捨てざるを得なくなった。同社は数百万ドルを投じて「カスタマーサービスセンター」なるものを開設した。名称こそディーラーではないが、実質的にはディーラーのように運営されている。

Cazooのカスタマーセンター
Cazooのカスタマーセンター    Cazoo

また、資金の問題もある。Cazooは、野心的な成長計画を持つ新興企業として設立されたが、初年度は110万ポンド(約1億6000万円)の売上に対して1900万ポンド(約28億6000万円)の損失を計上し、巨大な市場機会を開拓したことを示唆するものはほとんどなかった。確かに勢いがあり、今後も事業を継続していくだろうが、その道のりは長いと考えるのが妥当だろう。

多くの売上と利益を記録していながらも、50億ポンドという数字のほんの数%の評価額しか持たない老舗の大手自動車小売グループにとって、これは少し不愉快なことだ。

もちろん、株式市場は常に現実を反映しているわけではなく、多くの人はCazooが過大評価されている、あるいは伝統的なライバル企業が過小評価されていると考えている。答えは時間が明らかにしてくれるだろう。

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