【主役張れるか】日本でEV「成功or失敗」する? 2つのシナリオ考察

公開 : 2021.04.22 05:45  更新 : 2021.09.02 13:08

昨今EVの注目は高まっていますが、今後EVは普及するでしょうか。今後の成功/失敗の要因を考えます。

EVへの注目は高まっているが……

text:Kenichi Suzuki(鈴木ケンイチ)
editor:Taro Ueno(上野太朗)

今や環境問題は、喫緊かつ身近な課題として人々の生活に少しずつ、そして確実に影響を与えるものとなってきた。そうした流れの中、クルマに関する燃費規制の強化は、年々厳しくなる一方だ。

欧州ではメーカーが販売する全車両のCO2排出量の平均値の目標を1kmあたり95gとする2021年欧州燃費基準が導入されている。

日産リーフ(現行モデル)
日産リーフ(現行モデル)

これにあわせ、欧州ではCO2排出量のメーカー平均値を下げるEVやPHEVの新型モデルが数多くデビューし、日本への上陸を果たしている。

一方、日本においても「2050年カーボンニュートラル」の政府目標が発表されたこともあり、走行中のCO2排出量ゼロとなるEVへの注目度もかつてないほどに高まっている。

では、そんなEVが日本において主役となる日が来るのであろうか?

すでに日本では2009年に三菱からアイ・ミーブ、2010年には日産からリーフという2台のEVが発売されている。

どちらも静粛性が高く、動力性にも優れており、ハンドルを握れば誰もがEVの持つ商品性の高さに気づくことだろう。

ところが残念なことに、販売開始から約10年を経るものの、この2台が販売ランキング上位になったことはなく、「日本にEVが普及した」と呼べる状況には至っていない。

だが、欧州の燃費規制に端を発した、今回の新型EVラッシュをきっかけに、日本においてEVのヒット、そして普及が実現するのであろうか?

今回は、EVが日本において普及しえるかどうかを、成功する理由と失敗する理由の双方を挙げて考えてみたい。

日本で「EV普及」成功する理由とは

日本でのEV普及における、最大のポジティブな理由。

それが「日本はEVに向いている」というものだ。

EV充電ステーション
EV充電ステーション    シャッターストック

まず、日本のクルマの利用方法の特徴となる「1日に走る平均距離が短い」というものがEVに向いている。

航続距離が短くてよいということは、搭載する二次電池が少なくてすみ、クルマの価格も抑えられるし、充電の手間もかからないことになるからだ。

また、全国津々浦々まで送電網が整備されていることもプラスだ。

さらに、全国的に温暖であり、万一、電気がなくなって立ち往生しても、すぐに生命の危険に晒される可能性が低い。国土が広大であったり、砂漠や極寒の地で、クルマが動かなくなることが、そのまま生命の危険に直結する地も世界にはたくさん存在するのだ。

それと比べれば、日本は条件が良いというわけだ。

加えて、10年以上のEV販売に伴い、街中の充電スタンドの数も増えており、急速充電器は2020年の時点で約7700か所(CHAdeMO協議会より)、100V/200Vの普通充電スタンドは約1万4000か所(GoGo EVより)にもなる。

全国約3万か所のガソリンスタンドに比べれば少ないが、世界にある急速充電設備は、約2万4600か所しかない(CHAdeMO協議会より)。

その、3分の1以上が日本に存在しているのだ。世界屈指の充実ぶりといえるだろう。

次にヒットする理由は、「日本は海外発の流行に弱いということだ。かつて、日本で携帯電話といえば、ガラケー(フィーチャーフォン)が圧倒的なシェアを誇っていた。

しかし、2007年にアイフォーンが誕生し、すぐに日本にも上陸する。

当初は「値段も高いし、日本でアイフォーンは普及しない」という意見が強かったのだ。しかし、10年たって気づけば、ガラケーはすっかり駆逐されてしまった。なんだかんだと、世界的な潮流には、逆らえないものなのだろう。

とくにクルマは、意外と時代の空気に左右されやすい。

今ではベストセラーと認識されるトヨタプリウスも、デビューした2000年代当時は、「燃費性能は良いかもしれないが、割高であり、走りもよろしくない」と販売に苦戦していた。

しかし、2009年に登場した第3世代のころは、世の中の環境意識が高まりに税制優遇措置などが重なったことで、一気に人気者となった。

ほんの4~5年でクルマに対する世間の目は大きく変わることがあるのだ。今、現在、苦戦しているEVに対する認識も、手のひらを返したように変わる可能性も大きい。

ちなみに、最近になってアップルが自動車業界へ参入するといううわさが飛び交っている。

ソニーもコンセプトカーを発表して、クルマの研究を進めていることをオープンにしている。

もしも、そうした新しい勢力がEVを発売すれば、これまでにないほどの大きな注目を集めることは間違いないだろう。

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