多くの人が勘違い? 「走行距離課税」真の問題はどこに? クルマと税金を考える

公開 : 2022.11.24 17:05

政府が自動車に関連する「税」の見直しを発表しました。話題となっている「走行距離課税」について解説します。

批判も「走行距離課税」が話題に

いま、世の中で「走行距離課税」という言葉が独り歩きしている印象がある。クルマで走った距離に応じて税金がかかるという「発想」だ。

2022年10月下旬から11月上旬にかけて、ネットやテレビの報道番組などで「走行距離課税」が大きな話題になった。

「走行距離課税」は、EVの普及や燃費性能の向上などを要因としてガソリン税の減収が続く中、道路維持管理費用をまかなう財源を確保するねらいがあると報道されている。
「走行距離課税」は、EVの普及や燃費性能の向上などを要因としてガソリン税の減収が続く中、道路維持管理費用をまかなう財源を確保するねらいがあると報道されている。    シャッターストック

筆者のもとにも各方面から「走行距離課税」に関する問い合わせがくるため、報道関係者や一般ユーザーと意見交換しているのだが、そうした中で感じることがある。

それは、「走行距離課税」に関する、ある種の「勘違い」だ。

意見交換のなかで、「走行距離課税」という発想の背景について話を進めていくと、話相手が「なるほど、なんとかく分かった気がする」という展開になることが少なくない。そこで、本稿でも「走行距離課税」という発想について、私見を交えて深堀りしてみたいと思う。

まずは、いつから「走行距離課税」という言葉が一気に広まったのか?

きっかけは、2022年10月20日の参議院予算委員会での、鈴木俊一財務大臣が委員からの質問に答える形での発言だった。

その内容を筆者なりにまとめると「(道路インフラの修繕などを主体とした)財源が不足している中、自動車についてはEVの場合は燃料に関する課税がされておらず、クルマの重量も重いため道路に与える影響が大きい」という考えを示したのだ。

そのうえで……。

まだ検討段階にすぎない……

与党での税制改正の議論も踏まえて、走行距離に応じた課税について「1つの考え方」という表現をしたのだ。

なんとも政治家らしい答弁だが、これをメディアが「走行距離課税」と銘打って、近年中の実施が「ほぼ確定」したような報道につながっていったといえるだろう。

トヨタがスバルと共同開発したbZ4X
トヨタスバルと共同開発したbZ4X

さらに、10月26日に学識関係者や行政機関関係者などで委員が構成される政府税制調査会では、財務省から提示された資料をもとに、「走行距離に応じた課税」に対する審議がおこなわれた。

期間限定で一般公開された審議全体の模様を映した動画を見る限り、走行距離に応じた課税について、今後さまざまな方面からの声を反映させることを前提として、基本的に実施に対して反対する強い意見は出てこなかった。

そのため、ネットやテレビでは「走行距離課税」の実施の可能性がかなり高まったと捉えて、そうした報道になっていったようだ。

ここで、整理すべきポイントは大きく2つある。

1つは、「走行距離課税」に関する議論は、表面上はEV(電気自動車)に関することのように見えること。もう1つは、すべての種類のクルマに対する、包括的な税制改正という面をもつことだ。

この2つのポイントが、ゴッチャになって見られているような印象がある。

では、順に見ていこう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?

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