【ホットクロスオーバー対決】後編 ティグアンRはまさに背の高いゴルフR GLBの肌馴染みに好感

公開 : 2021.05.08 21:05  更新 : 2021.07.12 18:48

速さでも挙動でもホットハッチを再現しようとしたフォルクスワーゲンと、クロスオーバーの本分を残そうとしたAMG。2台はアプローチの異なる、似て非なるクルマ。英国編集部は、消去法的により自然なほうを勝者としました。

まさに背の高いゴルフR

text:Richard Lane(リチャード・レーン)
photo:Luc Lacey(リュク・レイシー)

室内の広さと同じく否定できないのが、フォルクスワーゲンの速さだ。メルセデスに対して99kg軽いだけでなく、2100rpmという低回転から42.9kg-mもの大トルクを発生することもその要因だ。

このドライブトレインを最大限まで活用するには、走行モードをスポーツかレースにする必要がある。その際にはスピーカーから合成したエンジン音が流れるが、同僚のジェームズ・ディスデイルにいわせれば「排気漏れしたスバル水平対向4気筒のサウンドを、大昔のコンピューターでサンプリングしたみたい」ということになる。

ウェイトとパワーだけではなく、トルクの最大値と幅広い発生回転域もティグアンRの有利な点。その走りは、ゴルフRのキャラクターを再現しようとしたものだ。
ウェイトとパワーだけではなく、トルクの最大値と幅広い発生回転域もティグアンRの有利な点。その走りは、ゴルフRのキャラクターを再現しようとしたものだ。    LUC LACEY

とはいえ、それがティグアンR独自のキャラクターを生み出しているわけではないのは明らかだ。フォルクスワーゲンは、ゴルフRのパーソナリティをそっくりそのまま引き写すことを意図した。

それは容赦ない加速だけでなく、おそらくクロスオーバーに予想する以上の俊敏さやダイレクトさ、標準装備のアダプティブダンパーがみせる薄気味悪いほどのボディコントロールまでもである。

ひたすらニュートラルな旋回性

それをさらに補佐するのが、新開発のRパフォーマンス・トルクベクタリングシステムだ。リアデフを電子制御クラッチで挟み込んだそれは、後輪駆動力の左右比率を調整する。リアへの駆動力配分は最大50%だが、そのすべてを片側のみに分配することも可能だ。

この、外側の後輪への駆動力配分を高める能力と協調するのが、フロントアクスルのXDSだ。これは、ハードなコーナリングの際にESPを利用して内側の前輪にブレーキをかける、擬似デフロックとでもいうべき電子制御デバイスである。

ティグアンRは、フロントにブレーキLSD、リアに多板クラッチ式トルクベクタリングを備える。
ティグアンRは、フロントにブレーキLSD、リアに多板クラッチ式トルクベクタリングを備える。    LUC LACEY

その結果はどうなるか。ゴルフRもそうなのだが、あふれるほどのセンスを感じさせるようなコーナリングをするわけではないのだが、どこまでもニュートラルで、どんな操作をしても、選んだラインを愚直になぞる。

ドライバーがすべきは、その切り立った鼻先を、ただ行きたい方向へ向けるだけ。あとはクルマが勝手にそちらを目指して突き進んでくれる。まるで、歯形だらけになったお気に入りのおもちゃへ突進するブルドッグのように。

クロスオーバーらしいGLBの挙動

峠道を飛ばすと、このティグアンは、GLBの及ばないようなペースをみせる。しかし、その接近戦は攻守交代する場合もまたある。

ロードホールディングの揺るぎないGLB 35だが、グリップは強烈なほどではなく、ロールは大きい。コーナリングは、暑さよりも冷ややかな精確さが前面に出たものだ。ティグアンほど、身のこなしに巧みなところはない。

絶対的な速さで勝るティグアンR。対してGLB 35は、もっと背の高いクルマらしい、ソフトな走りをみせる。
絶対的な速さで勝るティグアンR。対してGLB 35は、もっと背の高いクルマらしい、ソフトな走りをみせる。    LUC LACEY

しかし、少なくともこのクルマのアイデンティティを考えれば、それは間違いではない。よりソフトで角のない走りは、背の高いファミリーカーという役割にはむしろふさわしいものだ。

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