【唯一無二のリアシート時間】メルセデス・マイバッハSクラス S 680へ試乗 ラストV12 前編

公開 : 2021.06.29 08:25

メルセデスが生み出す最も高価なモデルに位置づけられる、マイバッハSクラス。ロールス・ロイス級を目指したV12エンジンのリムジンを、英国編集部が評価しました。

最新の純EVに並ぶほど静寂な車内

text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
電気自動車は、ほぼ無音のドライブトレインという特性を活かし、走りの洗練性という認識水準を改めた。その強みを発揮するかのように、ここ数年で純EVの高級サルーンは一気に増えようとしている。

それでも、V型12気筒の内燃エンジンを搭載した、メルセデス・マイバッハSクラスの静寂性に感動しないことは難しいだろう。最新の純EVに並ぶほど、車内は穏やかで静まり返っている。

メルセデス・マイバッハSクラス S 680 4マティック(欧州仕様)
メルセデス・マイバッハSクラス S 680 4マティック(欧州仕様)

ベースとなっているのは、新しいW223型メルセデス・ベンツSクラス。ホイールベースが180mm伸ばされ、ソフトなレザーで豪奢に仕立てられた車内に身をおき、発進する。存在感を消したような、エンジンの粛々とした質感には強く驚かされる。

高貴で落ち着き払った仕事ぶりは、ロールス・ロイス・ゴーストのそれに迫る。素晴らしい体験だ。

フロントに隠れているのは、ツインターボで過給される6.0L V型12気筒エンジンで、先代が搭載していたM277型と呼ばれるユニットの改良版。メルセデスが開発したトルクコンバーター式の9速ATと、四輪駆動システム、4マティックが組み合わされている。

マイバッハS 680の場合、611psの最高出力と、2000rpmから4000rpmの範囲で91.4kg-mの最大トルクを発生する。従来より若干数字は小さくなっているが、ライバルのゴーストが積む6.75L V12ツインターボより40psと4.9kg-mたくましい。

世界で最も完成度の高いリムジンの1台

発進時だけでなく、アクセルペダルを軽く踏んでいる限り、S 680の車内はほとんど無音。高速道路を飛ばしていても、遠くでかすかなハミングが聞こえるだけ。常にガソリンエンジンの存在からは切り離されている。

ステアリングホイールには、シフトパドルが付いている。操作すれば、シルクのようなキメの細かさで変速を静々とこなしてくれる。

メルセデス・マイバッハSクラス S 680 4マティック(欧州仕様)
メルセデス・マイバッハSクラス S 680 4マティック(欧州仕様)

この圧倒的なドライブトレインの沈黙は、メルセデス最新のアクティブ・ロードノイズ補正システムがバックアップ。ノイズキャンセリング・ヘッドホンのように、不要な低周波音を検出し、車内のスピーカーから逆位相の音を再生して打ち消す機能だ。

突出した穏やかさを備えるだけでなく、S 680はパワフル。0-100km/h加速を4.5秒でこなすという事実が、それを証明している。2.2tを超える車重でも、とても速い。

恐らく機動性では、ベントレー・フライングスパーほどではないと思う。それでも世界で最も完成度の高い、クルーザーのようなリムジンの1台であることは間違いないだろう。

とてもシームレスで、ドライバーも心地良い。ゆったりとリアシートに座るオーナーやVIPにとっても、もちろん心地良い。

市街地を運転するような場面でも、ドライバーはほとんど筋肉を必要としない。操作系の手応えは繊細で優美。ステアリングホイールは指先で回せるほど軽いが、ボディサイズとは裏腹に、とても正確に操舵できる。

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