【コスワース・エンジン搭載】モーガン4/4 初代オーナーはレースドライバー 後編

公開 : 2021.09.04 17:45

119psを信じさせる、勢いよく響くノイズ

ハーパーの4/4は、さらに8年ほど週末を過ごすと、綿密なレストア作業へ移された。「40年も一家とともに過ごし、レストアしなければ、このまま駄目になるだろうと。2012年1月に、モーガンの専門ガレージへ持ち込んだんです」

「今振り返ると、信じられないほど悪い状態でした。トランスミッションもオーバーホールが必要だと判断されました。すでに2回も施していたのに。プロペラシャフトは長さが違い、ひどい振動が出ていたようです」

モーガン4/4(1964年/英国仕様)
モーガン4/4(1964年/英国仕様)

レストアでは、2度の幸運に恵まれた。1つ目は、コルチナ用1500エンジンがリビルドできない状態だったこと。2つ目は、ワイアットが1498ccのコスワース・エンジンを、シャシー番号996の4/4へ載せ替えることに合意したこと。

レストアには長い時間を必要とし、エンジンのリビルドにも充分な時間が残っていた。仕上がったコスワース・エンジンは、現役時代と同等の、119psと14.6kg-mを発揮することが確かめられた。

幸運にも古巣のモーガン4/4へ戻った、コスワース・ユニット。筆者はレザーで包まれたバケットシートに座り、キーをひねる。回転を高めた時に勢いよく響くノイズを聞けば、その最高出力には疑いを持たないだろう。

ツイン・ウェーバーキャブは、アイドリングの回転数を保つために、少しアクセルを撫でる必要がある。ドライサンプは、オイルが充分に温まるのに10分ほどかかる。

1964年に戻ったような気分

準備が整ったら、コスワースの名に恥じない運転をすることが最適。滑らかに変速できる4速MTは、まさにお手本と呼べるフィーリング。曖昧さや引っ掛かりがまったくなく、素早く操作できる。

コルチナ用エンジンのままだったら、体験はまったく違っていただろう。コスワースのレブリミットは遥かに高い。4000rpmで変速せずに、3速のまま7000rpmまで引っ張る。エンジンは生き生きと回り、タイトな車内をメカニカルな重奏で満たしてくれる。

モーガン4/4(1964年/英国仕様)
モーガン4/4(1964年/英国仕様)

「1964年に戻ったような気分ですね」。助手席で笑顔のハーパーが声を上げる。生け垣が高速で左右を流れる。遠くに見える道の彼方が、勢いよく迫ってくる。

丁寧にレストアが施され、忠実に復元されたモーガン4/4。ジョン・マッケニーがステアリングを握っていた時を想像するのに、セピア色の写真を眺める必要はない。ジム・クラークがドライブするロータスを、このノーズ越しに追いかけたのだろう。

1964年の印象と変わらないように、コスワース・エンジンは4/4の車重を超えるパンチ力を披露する。多くのレーシング・モーガンとは異なり、ハーパーが愛する1台は、今もまだ充分な力を保持しているようだ。

艷やかなシルバー・ブルーに塗られたモーガン4/4が走ってきたのは、スプリントではなく、数十年に及ぶマラソンだったのかもしれない。まだ現役で走り続けているという事実に、うれしくなった。

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