ジャガーXK140/フォード・サンダーバード 英米の2シーター・コンバーチブル 前編

公開 : 2021.12.11 07:05

V型8気筒エンジンに3速MTを搭載

初代サンダーバードが発表されたのは、1954年初頭。その年の秋に、1955年モデルとして販売が始まっている。ライバルの初代シボレーコルベットへ寄せられた不満へ対応するように、スチール製ボディと開閉できるサイドウインドウを備えている。

シャシーは、フォード・メインラインやカスタムラインなどに用いられていた、ボックスセクション・タイプを利用。フロント・サスペンションはボールジョイントの独立懸架式で、同年式のサルーンより車高は抑えられている。

ターコイズブルーの初代フォード・サンダーバードと、レッドのジャガーXK140 SE オープン2シーター・ロードスター
ターコイズブルーの初代フォード・サンダーバードと、レッドのジャガーXK140 SE オープン2シーター・ロードスター

エンジンは292cu.in、4785ccのV型8気筒で、専用のデュアル・ヘッダーとエグゾーストを採用。圧縮比やギア比などが相乗し、最高出力204ps、最高速度185km/h以上と、当時のアメリカ車としては高い性能を誇った。

トランスミッションは、フォードOマティックと呼ばれた3速MTで、6気筒エンジンを積んだ生ぬるい初代シボレー・コルベットを余裕で負かす走りを披露。車重1500kgのグラマーな2シーターは、当時の多くの欧州製2シーター・モデルをも凌駕した。

1955年の新車価格は2692ドルからと、かなり強気。スイフト・シュアと呼ばれたアップグレード・ブレーキや、マスター・ガイドとフォードが名付けたパワーステアリング、パワーウインドウなどを装備すれば、4000ドルに限りなく近づいた。

それでも発売初日、全米のフォードには合計3500台のオーダーが集まったという。だが年間では伸び悩み、合計の販売台数は1万6155台。悪くない数字だったが、1958年から4シーターへの変更を決めるのには不足ない、低調な売れ行きではあった。

同時期に英国で作られていたジャガーXK140

初代のモデルライフは3年間と短かったが、レーシングドライバーのファン・マヌエル・ファンジオや女優のマリリン・モンローまで、少なくない著名人もサンダーバードへ恋に落ちている。セカンドカーとして、富の象徴にもなった。

1956年には、ハードトップのリアピラーに丸い窓がオプションで追加。スペアタイヤは、コンチネンタル風にリアバンパー上へ載るように変更された。そのおかげで、荷室空間には更に余裕が生まれた。前後の重量バランスも改善されている。

ジャガーXK140 SE オープン2シーター・ロードスター(OTS/1954〜1957年/北米仕様)
ジャガーXK140 SE オープン2シーター・ロードスター(OTS/1954〜1957年/北米仕様)

V8エンジンには、排気量312cu.in、5.1L版も登場。218psから228psまで、仕様で異なる最高出力が与えられている。

最終年の1957年には鋭いテールフィンと肉厚なバンパー、新しいメーターパネルなどを獲得し、全長は約140mm成長。スペアタイヤは広くなったトランク内へ戻された。

エンジンにも手が加えられ、4.8Lで215psへ向上。5.1Lでは、カムシャフトの違いで248psから273psまで選べるようになっている。

2基の4バレル・キャブレターを積み、スーパーチャージャーを組めば304psまで高めることも可能だったが、オーダー数は少なかった。フォードが、サンダーバードをスポーツカーではないと強調してたことも理由かもしれない。

ちょうど同じ頃、ジャガーは淡々とXK140を作り続けていた。XK120を初代とする2代目に当たる、生粋のブリティッシュ・スポーツカーだった。北米市場を強く意識したモデルで、サンダーバードと比べるのも的外れではないだろう。

この続きは中編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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