フォード・ブロンコvsジープ勢 新世代オフローダー 戦いの行方は?

公開 : 2022.01.04 11:05

ブランドから切り離した戦略

ブロンコに対する驚きは、2020年の最新モデルの量産開始だけではなかった。

フォードとしては、ブロンコをモデルラインナップの1つではなく、ブランドとして独立させるような事業戦略を描いてきた。

SEMAショーで登場したブロンコのカスタムモデル
SEMAショーで登場したブロンコのカスタムモデル    フォード

現行フォードのSUV&クロスオーバーラインナップは、エコスポーツ、エスケープ、ブロンコスポーツ、ブロンコ、エクスプローラー、エッジ、マスタングマッハE、そしてエクスペディションとしており、ブロンコはカテゴリーとしてはコンパクトSUVとミッドサイズSUVの中間的な存在だ。

そのうえで、ブロンコをブランドとして切り離したマーケティング戦略を描いている。

とくに本格的なオフローダー対応として、アメリカ国内外に向けて新車オプション設定品や社外品を駆使した、かなり派手なカスタマイズをメディアを通じて露出している。

例えば2021年11月に米ラスベガスで開催された世界最大級の自動車アフターマーケットイベントのSEMAショーなどを通じて、ブロンコ固有の世界感を情報発信した。

パワートレインについては、現時点では電動化を強調することはせず、あくまでもライフスタイル系ブランドとしてのベーシックな訴求をおこなっている印象だ。

むろん、フォードがブロンコを通じてこうした事業戦略に積極的に出ている背景には、ジープの大躍進がある。

自己成長遂げるジープ勢

FCAジャパンの2020年1月から11月の累計販売台数は2万3837台と前年同期比で14%増となった。

また、PSAと融合して誕生したステランティスとしても、日本市場では同期で前期比14%となり、コロナ禍や半導体不足という厳しい市場環境の中で、ジープを筆頭として個性あるブランドの販売が堅調であることが証明されたといえるだろう。

ジープ・ラングラーアンリミテッド
ジープ・ラングラーアンリミテッド

FACジャパンのオンライン会見の中で、筆者を含む多くの報道関係者が驚いたのは、グランドチェロキーの平均顧客年齢が40代と高級SUVとしてはかなり若いことだ。

ラングラーを含めて、ジープユーザーはさまざまなイベントやSNSなどを通じて、ユーザー同士の横のつながりが強い。

ユーザー自らがジープのブランド価値を高めているような印象がある。

また、ジープでは電動化戦略として4xeを軌道に乗せており、プラグインハイブリッド車に次いでジープのバッテリーEV量産がこれから本格化していく。

今後、フォードとしてもジープ全盛の日本市場に対して、フォードの直接資本、またはパートナーとの連携でブロンコブランドとして日本再上陸の可能性も否定できないだろう。

ジープvsブロンコの図式が日本でも始まれば、この分野は市場が拡大し、ユーザーにとってさまざまな楽しみが増えていくことだろう。

今後の展開に期待したい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    桃田健史

    Kenji Momota

    過去40数年間の飛行機移動距離はざっと世界150周。量産車の企画/開発/実験/マーケティングなど様々な実務を経験。モータースポーツ領域でもアメリカを拠点に長年活動。昔は愛車のフルサイズピックトラックで1日1600㎞移動は当たり前だったが最近は長距離だと腰が痛く……。将来は80年代に取得した双発飛行機免許使って「空飛ぶクルマ」で移動?
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

関連テーマ

おすすめ記事

 

ジープ グランドチェロキーの人気画像