2+2の上級FRスポーツクーペ ロータス・エクセル 英国版クラシック・ガイド 前編

公開 : 2022.05.21 07:05

+2のリアシートが与える実用性と、トヨタ製部品による信頼性を備えたFRのロータスを、英国編集部がご紹介します。

突出した操縦性にしなやかな乗り心地

トヨタとの提携で、ロータスは信頼性の高い部品を利用できるようになった。1975年の先代、エクラとは比べ物にならないほど、1982年のエクセルは優秀だった。

トランスミッションとデフ、クラッチ、ディスクブレーキ、ドアハンドル、ヒーターとエアコンなどは、すべてトヨタ社製。コストダウンにもつながり、新車価格はエクラより1100ポンドも安かった。初期型では、エクラ・エクセルと呼ばれていたが。

ロータス・エクセル(エクラ・エクセル/1982〜1992年/英国仕様)
ロータス・エクセル(エクラ・エクセル/1982〜1992年/英国仕様)

スタイリングを手掛けたのは、オリバー・ウィンターボトム氏とピーター・スティーブンス氏。ウェッジシェイプでありながら、滑らかな面構成で空力特性も磨かれ、Cd値は0.36から0.32へと減少。リアシート側の空間にもゆとりが増えている。

洗練性も大幅に高められていた。突出した操縦性と、感触の良いシフトフィール、しなやかな乗り心地が組み合わされ、高速クルージングも快適にこなせる能力を備えていた。

シャシーバランスも優秀で、前後の重量配分は50:50。ドライビングを心から楽しめるFRの2+2クーペとして、短距離の気晴らしにも長距離の休暇旅行にもピッタリ。ただし、後方視界は褒めにくいけれど。

1986年、182psを発揮する高性能版のエクセル SEが登場。洗練性や乗り心地が犠牲になっていたものの、動的能力でエクセルを当時のクラストップに位置づけた。

状態が良ければ手を掛ける価値がある

高性能な上級スポーツとしてエクセルを捉えたドライバーには、オートマティックとエアコンが標準装備されたSAが、最適グレードとしてハマった。レッドトップと呼ばれた、赤いヘッドカバーのSE用エンジンも搭載されていた。

レザー内装とクラリオン社製の高級オーディオが、エクセル SAの訴求力を高めた。ZF社製のATは、エンジンのパワーバンドに合わせてチューニングも受けていた。

ロータス・エクセル(エクラ・エクセル/1982〜1992年/英国仕様)
ロータス・エクセル(エクラ・エクセル/1982〜1992年/英国仕様)

ロータスらしく、シャシーはスチール製のバックボーン・スタイル。亜鉛メッキされ従来より遥かに錆びにくいものの、今探すなら状態確認は不可欠。シャシー本体以外のスチール部分は、錆びていておかしくない。

ロータスの912ツインカム・ユニットは、想像以上にパワフル。信頼性は低くないが、定期的なメンテナンスは不可欠だ。

洗練された4シーターを巧みに設計し、スーパーカーのようにダイナミックなスタイリングとハンドリングで仕上げたロータス。鋭い回頭性でコーナーを処理しつつ、数時間の高速移動も快適にこなせる。サーキットを攻め立てれば、能力を存分に発揮できる。

全高は同時期のライバルより30cmほど低く、眺めているだけで嬉しくなるデザインも大きな魅力。多くのドライバーにとって、状態の良いエクセルは手を掛ける価値のあるクルマといえるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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