【控えめだがホンモノ】究極のフォルクスワーゲン・ゴルフ!今まで見えてこなかった『R』の真価を知る

公開 : 2025.07.08 12:05

昨年マイチェンし登場した、いわゆる8.5世代のフォルクスワーゲン・ゴルフ。そのハイパフォーマンスモデルである『ゴルフR』に、吉田拓生が試乗します。クローズドコースのテストで、今まで見えてこなかった真価が感じられました。

実は超お買い得? 日本市場のゴルフR

新型モデルのメディア向け試乗会がクローズドコースで行われることは珍しくない。中でも今回、フォルクスワーゲン・ジャパンが千葉県木更津市にあるポルシェエクスペリエンスセンター東京で開催した『フォルクスワーゲン・ゴルフR』を中心とした試乗会は興味深いものだった。

ゴルフRは昨年マイナーチェンジが発表され、今年早々に上陸を果たしている。マイチェンのわかりやすいトピックは2Lターボエンジンの最高出力が320psから13psアップの333psに向上したこと。それ以外にもライト類のデザイン変更などが含まれている。

『フォルクスワーゲン・ゴルフR』を中心とした試乗会に参加。
『フォルクスワーゲン・ゴルフR』を中心とした試乗会に参加。    田中秀宣

だが今回の試乗会の目玉は、リアデフの左右に湿式クラッチを設け左右のリアタイヤのトルク配分を行う『Rパフォーマンストルクベクタリング』にあった。この機能自体はマイチェン前にも装着されていたが、公道でその効果をはっきりと体感するのは難しかった。それなりのスピード域に入って初めて体感できる機能だからである。

新型ゴルフRはグレード設定にも変更があった。前期型ではゴルフRのみだったが、後期型はアドバンスという上位グレードが追加されている。アドバンスはコクピットから電制ダンパーを調整できるDCC機能を装備するほか、タイヤ&ホイールが1インチアップされた19インチの専用品となる。

車両価格はゴルフRの704万9000円に対し、ゴルフRアドバンスは749万9000円。そう聞くと安くは感じないが、マイチェン前のモデルでも本国価格を日本円に置き換えると軽く900万円を越えていたので、日本市場に対する配慮が大いにあることも理解しておく必要があるだろう。

スキール音が出る速度域で効果アリ

試乗会ではハッチバックとヴァリアントの全グレードを試したが、今回はアドバンスに絞って報告することにする。様々なコースでゴルフRアドバンスの走りを体感できたわけだが、最も印象的だったのは全長2.1kmのハンドリングトラックでの試乗だった。

ドライビングモードをスポーツやレースに設定し、ペースカーの先導で走るプログラムなのだが何しろペースが速かった。S字やタイトコーナーで4輪がスキール音を上げるほどだ。

最も印象的だったのは全長2.1kmのハンドリングトラックでの試乗だった。
最も印象的だったのは全長2.1kmのハンドリングトラックでの試乗だった。    田中秀宣

その速度域では、これまで『なんとなく』だったリアのベクタリング効果が『なるほど!』と思えてくる。タイヤが悲鳴を上げていても走行ラインが乱れる気配すらなく、ステアリングを切り増そうと思う頃にスッと『リアも曲がって』くれる。その結果ドライバーは自信を持ってハイペースを保てるのである。

また、カスタムモードを選ぶとダンパーの設定をかなり細かく調整できるのだが、これもクローズドコースだからこそ変化がよく理解できた。

だがゴルフRに関して重要なことは、このクルマはフォルクスワーゲンが形容している『テーラーメイドスーツを纏ったアスリート』そのものだという点。超がつく高性能モデルだが、それ故に『操ってやったぞ!』という満足感は得にくいる。

そしてもちろん、公道でその効果を堪能することも難しい。その点では今回比較試乗したGTI(FF)の方が走りにメリハリがあり、ドライビングの幅も広かった。最高価格の1台が、最高のドライビングファンを与えてくれるわけではないのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    田中秀宣

    Hidenobu Tanaka

    写真が好きで、車が好きで、こんな仕事をやっています。
    趣味車は89年式デルタ・インテグラーレ。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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