ラグジュアリーカー、今なぜ売れるのか 高級車メーカーが2022年に販売台数を伸ばしたワケ

公開 : 2023.01.25 12:08

ロールス・ロイス、ベントレーといった高級車メーカーが、2022年に過去最高の販売を記録。それを支えるのは、ビスポークの好調と金融緩和の流れとレポートされています。

2022年の売れ行きは?

毎年1月中旬から2月にかけて世界の各メーカーから前年の生産(販売)実績が発表される。そこで目を惹いたのは高級車メーカーの販売が好調だったことだ。

高級車を代表するロールス・ロイスベントレーを筆頭に、ランボルギーニポルシェといったスポーツカー・メーカーも前年を上回る好調なセールスをマークしている。

ロールス・ロイスの好調を支えるカリナン。
ロールス・ロイスの好調を支えるカリナン。    ロールス・ロイス

なかでもプレミアム・クラスのロールス・ロイスやベントレーが、過去最高となる販売台数を記録したことに注目したい。

それぞれの戦略とリザルトを解析してみた。

ロールス 台数より収益を重視

2022年はロールス・ロイス・モーター・カーズにとって記念すべき年で、初の電動モデルとなるスペクターを発表し、6000台を超える納車を行った初めての年となった。

2022年の販売台数は、同社118年の歴史の中で最高となる6021台(前年比8%増)を記録した。10年前(2012年)の販売台数は3279台に過ぎず、その躍進ぶりが分かる。

「ビスポーク」の需要は年々高まり、その額は平均で7000万円に達するという。
「ビスポーク」の需要は年々高まり、その額は平均で7000万円に達するという。    ロールス・ロイス

しかし、単に台数だけを追うのではなく、年を追うごとに需要が高まる「ビスポーク」を重視。その額は平均で約50万ユーロ(約7000万円)に達し、過去最高を記録した。

同社は利益重視の方向で歩み、顧客の好みや要望に真摯に耳を傾けてきた。元来持つ存在感と希少性を高めながら、ブランドを意識的に若返らせたことが成功の理由といえる。

最近ではブラックバッジ・シリーズの設定や、ボートテイルのような伝統のコーチビルド・プログラムの復活など、パーソナライズをより推し進めている。

2022年はほとんどの地域で売上高を更新し、特に中東、アジア太平洋、米国、欧州で大幅な伸びを記録。販売台数を伸ばした要因は、カリナンが大きな役割を果たした。

日本での登録は240台(日本自動車輸入組合発表値)で、2021年と同数だった。しかし台数こそ変わらないが、売り上げ的にはビスポークが大きく貢献しているはずだ。

右肩上がりのベントレー

かつてはロールス・ロイス傘下にあったベントレーだが、1998年にフォルクスワーゲン・グループ(VW)に買収され、一方のロールス・ロイスは最終的にBMWグループに入る。

VWグループはランボルギーニもそうだが、そのブランドが持つ魅力をより際立たす方向性で見守り、必要以上に干渉せずにじっくりと育てていることが特徴といえる。

ベントレーのアジア太平洋地域のラインナップに今年、ベンテイガ・エクステンデッド・ホイールベースが加わるという。
ベントレーのアジア太平洋地域のラインナップに今年、ベンテイガ・エクステンデッド・ホイールベースが加わるという。    ベントレー

ベントレーは2002年に1063台だったが、2012年には8倍となる8510台まで急伸。2022年の販売台数は1万5174台(前年比で4%増)で、20年間で約14倍となった。

車種別ではベンテイガが過去最高台数を記録して42%を占め、5月に加わったエクステンデッド・ホイールベース(EWB)の受注も好調だという。

そこにGTとGTコンバーチブルと好調なコンチネンタル系が続き30%を占めた。

新たに導入されたフライングスパー・ハイブリッドがフライングスパー・シリーズ全体に占める割合は、世界では30%だがイギリスでは65%と突出した高さに注目したい。

南北アメリカ、欧州、アジア太平洋地域で過去最高の販売台数を記録したが、中華圏のみマイナスだった。日本は過去最高となる644台(前年比+8%)を記録している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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