フェラーリV8をミドシップ スバッロ・スーパーエイト 240馬力の酔わせる融合 前編

公開 : 2023.03.26 07:05

マラネロのV8エンジンをリアに押し込んだ、斬新デザインのハッチバック。スイス生まれのワンオフ・モデルを、英国編集部がご紹介します。

既存の概念を超えたスバッロの作品

フランコ・スバッロ氏が手掛ける作品は、どれも既存の概念を超えている。ズバッと。

イタリアに生まれ、スイスでデザイン会社を創業した彼は、自動車業界の異端児と呼ぶに相応しい。彼の作品を目の当たりにすると、まるで他の惑星から運ばれてきた乗り物のように見える。デザイナーのルイジ・コラーニ氏の仕事も同様だった。

スバッロ・スーパーエイト(1984年/欧州仕様)
スバッロ・スーパーエイト(1984年/欧州仕様)

スバッロ社の奇抜なコンセプトカーは、スイスのジュネーブ・モーターショーで発表される事が多い。近年の同社のブースには、彼が主宰するデザイン学校の学生作品が多く並んでいるけれど。

フランコが描き出すスタイリングは極めて多彩だ。必ずしも有機的な曲線に包まれているわけではない。スーパーエイトのように鋭く挑戦的な例も、得意とするスタイルの1つといえる。

スーパーエイト誕生の経緯は定かではない。最初のオーナーも不明。アメリカのTVドラマ、私立探偵マグナムにも登場するフェラーリ308 GTSのエンジン音は素晴らしいが、低い運転姿勢とタイトな車内に、改善の余地を感じたのかもしれない。

少なくとも、同様に小さなハッチバックのリアへ12気筒エンジンを押し込んだ、スーパートゥエルブの後継モデルだったことは間違いない。こちらはカワサキ製の1.3L 6気筒エンジンが2基組み合わされ、5速MTを介して後輪を駆動していた。

1984年のジュネーブ・モーターショーで発表

スーパートゥエルブは、ピーキーなバイク用エンジンを合体させるという、複雑な技術で成り立っていた。そう考えると、フェラーリの量産モデルから心臓移植したスーパーエイトは、より良識のある内容といえる。注目度は変わらないとしても。

斬新なクルマを数多く手掛けるフランコは、メカニックとしてキャリアをスタートさせ、分野を超えたカーデザイナーへステップアップしていった。スイスにスタジオを構えると、裕福な顧客を相手に、特別なクルマを生み出すようになった。

スバッロ・スーパーエイト(1984年/欧州仕様)
スバッロ・スーパーエイト(1984年/欧州仕様)

他の例と同様に、スーパーエイトも1台のみが作られた。1984年のジュネーブ・モーターショーで展示されているが、その後は公道を走る機会が少なかったようだ。現在の走行距離は2万7000kmほどだという。

現在のオーナーは、オランダのカーコレクター、ハーバート・ファン・クイク氏。多様なコレクションの、重要な一角をなしているという。

農場が広がるアムステルダム郊外の倉庫には、ロータス・エリーゼノーブルM12、デ・トマソ・パンテーラのほか、アメリカン・クラシックなどが所狭しと並ぶ。興味の幅は非常に広いようだから、特別なハッチバックが含まれていても不思議ではない。

当時のスバッロは、派手なボディキットで着飾った、見た目重視のショーカーも多く生み出していた。しかし、スーパーエイトはしっかり中身が伴っていることに驚かされる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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